法律基礎知識

養育費

「養育費を請求しない」という合意について

法律基礎知識/養育費

離婚の相談をお受けしていると、

「養育費を請求しない代わりに、親権を渡してほしい」

「養育費を一括払いにしてもらいたい。その代わり、将来的な請求はしない。」

というような希望をよく耳にします。

 

これを受けて、

「相手方が養育費を請求しないと言うなら、親権は譲る」

「これっきりで養育費の支払いが終わるなら、多少無理してでも一括払いに応じる」

という判断をされる方もいらっしゃると思います。

 

過去には、養育費は子どもの権利なので、親が勝手に放棄することはできないから、養育費を請求しないという合意は無効である、と判断される事例もありました。

しかし、そのように考えると、いったんは養育費を放棄すると言って有利な条件を引き出した親が、しばらく経ってから、今度は子どもの権利を主張して養育費を請求してくることが可能となってしまいます。

それはいくらなんでもおかしいということで、現在では、「養育費を請求しません」という合意は、特に子どもの福祉を害するなどの特別な事情がない限りは有効と考えるのが一般的です。(大阪家裁平成元年9月21日審判など。)

 

しかし、これは、「両親双方の経済的な事情が、現状のまま変わらないのであれば」という条件付きであり、いかなる場合でも、養育費を支払わなくてよくなるということではありません。

養育費というのは、その他の金銭と違い、子どもが成人するまでの長い長い年月にかかわるもので、「事情による変更」が認められる余地があります。

例えば、子どもを育てている側の収入が激減した場合や、相手方が離婚当時には無職だったがその後就職してある程度の収入を得るようになった場合などには、「事情変更」により養育費の支払いを命じられることがあり得ます。

 

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堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子

 

慰謝料の代わりに養育費を高くする?!

慰謝料/法律基礎知識/離婚について/養育費

離婚の際に、相手方に資力がなく、一括での慰謝料支払いが困難なことがあります。

そのような場合、「慰謝料は要らないので、その代わりに養育費を相場より高めにもらいたい」という希望される方が多くいらっしゃいます。

 

しかし、注意しなければならないのは、養育費は、一度決めたら絶対に不変というものではなく、将来の双方の経済状態などが変われば、変更される可能性がある、ということです。

つまり、例えば、夫の給与が減額されたり、再婚して扶養家族が増えたりすると、養育費も減らされる可能性があるのです。

また、設定した金額があまりにも高額で相手方の収入からの支払いが困難だと考えられる場合に、家庭裁判所の判断で減額が認められた例もあります。

(※もちろん、逆に、事情の変更により増額が認められることもあります。)

 

これに対して、慰謝料は、養育費とは全く性質の違う金銭で、離婚せざるを得なかったことに対する損害賠償金であり、一度合意すれば金額が変更されることはありません。

養育費とは違い、相手方の経済力が変わっても、減らされることはないのです。

したがって、慰謝料を請求できるケースにおいては、うやむやにしないで、きちんと慰謝料を合意し、一括払いができない場合には分割払いで支払ってもらうべきだと考えます。

 

当事務所では、離婚にまつわる金銭問題に関し、女性弁護士がご相談に応じております。

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堺けやき法律事務所  弁護士  深堀 知子

 

 

養育費の減額請求

法律基礎知識/養育費

養育費とは、離婚の時に合意した金額が成人まで当たり前に続くものではなく、それぞれの生活状況や収入が変化した場合には増減を求めることができます。

養育費の支払いは長ければ20年近くに及ぶものですから、最初に決めた養育費が不相当になることはままあります。

養育費を支払っている側(主に父親)が病気をしたり職を失ったりして、当初の養育費を支払わせるのは酷だという状態になることもあり、そのような場合に養育費の減額が認められることがあります。

逆に、父親が出世して収入が上がり、それに伴い増額を求めるというケースもあり得ます。

 

よく、無職になったら直ちに養育費がゼロになるのですか?と聞かれることがありますが、必ずしもそうではありません。

心身ともに健康で、仕事をしようと思えばできる状態にある場合は、就職したとすれば得られるであろう収入を推定し、それを元に養育費の支払義務が定められます。

したがって、転職のために一時的に無職になった場合などでは、養育費の減額が認められる可能性はほとんどありません。

これに対し、病気などで全く働けず、将来的にも改善する見込みがない場合には、養育費の支払いがゼロ、あるいはそれに近い金額になることもあるでしょう。

また、再婚相手が産休・育休のため働けず、養育費の支払いがきついと父親が養育費の減額を求めたケースで、再婚相手が仕事を休んでいる期間だけ養育費の減額を認めるとされたこともあります。

 

さらに、離婚当初に、一般的に妥当とされる範囲を超える法外な養育費を約束したが、実際にはとても支払不可能であったというケースにおいて、減額が認められたこともありました。

養育費の減額には、「事情の変更」という要件を満たす必要があります。

このケースでは、特に離婚前後で収入が大きく変わったわけではなく、特別に「事情の変更」があったようには見受けられませんが、現実にはそれを支払わせると父親の生活が成り立たないほどの高額であったことから、当事者間の公平を考えて減額を認めたものと思われます。

 

養育費の減額は、収入の減少があれば自動的に認められるというものではなく、積極的に減額を求めていく必要があります。

特に、家庭裁判所の調停・審判・裁判、もしくは公正証書で養育費を決定している場合には、放置しておくとその書面に記載された金額で強制執行されるおそれがありますので、減額を求めたい場合にはできるだけ早期に調停の申立てを行なうことをお勧めします。

 

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再婚した場合の養育費支払い

法律基礎知識/養育費

元夫が元妻に子どもの養育費を支払っているケースで、元夫が再婚し、再婚相手(専業主婦)との間に子どもが生まれたとします。

この場合、元夫が元妻に払う養育費はどのように計算されるでしょうか。

 

元夫が扶養すべき家族は、元妻との間の子供だけではありません。

再婚相手とその子どもに対しても扶養義務を負っています。

扶養家族が増えたことにより、養育費の額は再婚前よりも少なくなります。

 

成人である再婚相手の生活費の指数を生活保護基準によって計算すると、0歳から14歳の子どもの場合とほぼ同じ数字になります。

つまり、計算上、元夫は子ども3人を扶養する義務があるとの同じことになります。

冒頭に挙げた例の場合、養育費算定表で、子ども3人の表を利用して金額を求め、その3分の1が元妻との間の子に対する養育費ということになります。

 

例えば、元夫の給与収入が年500万円、元妻の給与収入が年100万円、子どもは0~14歳が1人としますと、

再婚前の養育費は4~6万円ですが、

再婚して冒頭に挙げた例のような状況になると、子ども3人の表で見ると8~10万円であり、1人当たりは3分の1ですので約2.7万円~3.3万円になります。

 

しかしながら、再婚したことを理由に養育費の減額を請求できるかというと、いったん調停などで決めた金額を変更するのは簡単ではなく、

自らの意思で再婚して扶養家族を増やしていることや、収入に変化がなく十分に養育費の負担が可能なことなどを理由に、減額が認められなかったケースもあります(熊本家裁平成26年1月24日審判)。

 

また、逆に、元妻が再婚して子が再婚相手と同居している場合でも、養子縁組をしない限りは扶養義務が発生しませんので、養育費の決定に当たって再婚相手の収入が考慮されることはありません。

これに対し、養子縁組をしますと養親(再婚相手)に扶養義務が生じます。

しかも、養子縁組をしたからには、養親の扶養義務が第一次的であり、まずは養親が自分の収入で養子を育てるべきだとされています。

したがって、養親に十分な収入がある限りは、元夫は養育費の支払義務を負うことはありません。

 

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養育費の一括払いの危険性

法律基礎知識/養育費

日本では、親の離婚後に養育費が支払われているケースは全体の約2割に過ぎないと言われています。

残念ながら、日本にはまだ国が強制的に養育費を徴収するシステムはなく、養育費支払いと回収は、個人的に処理すべき問題だとされています。

そんなニュースを聞くと、「将来支払われなくなる可能性が高いなら、今、まとまった金額をもらっておきたい」と考えたくなりますし、実際、そのような要望を出される方は多いです。

 

しかし、養育費は日々発生するものであり、将来の分を先取りすることは認められていません。

相手方が支払いに同意すれば一括払いで受け取れることもありますが、それはごく稀なケースです。

 

養育費の一括払いは、次のようなリスクをはらみます。

 

(1) 贈与税が課税される危険性がある

税務上、養育費の一括払いは贈与とみなされる可能性があり、受け取った側に多額の課税がなされるおそれがあります。

例外的に、信託を利用すれば課税の対象にはなりませんが、別途手続を取らなければなりません。

 

(2) 将来的に再請求される可能性は残る

「成人までの養育費を一括払いで渡せば、今後一切請求は来ないのですか?」と質問されることがありますが、そういうわけではありません。

一括払いで支払った金額が少なく、子どもにとって不利益だと判断される場合には、将来的に追加での支払いが認められることもありますし、

子どもや双方の親の状況の変化によって、養育費を増額するように命じられることもあります。

したがって、敢えて一括払いを選択する場合には、今、一括のつもりで支払っても、将来、また支払いをする必要が生じるかもしれないというリスクを十分認識しておく必要があります。

 

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養育費不払いのときの給与差押え

法律基礎知識/養育費

約束した養育費を支払ってもらえない場合に取れる手段のひとつが給与の差押えです。

差押えを行なうためには、いくつか条件があります。

 

1 「債務名義」があること

差押えは、「債務名義」として使える書類がないとできません。

と言っても、「債務名義」という名前の書類があるわけではなく、それを元に差押ができる書類のことを総称して「債務名義」と呼んでいます。

養育費の場合ですと、「調停調書」「和解調書」「判決」「公正証書」等によって養育費を決めている場合には、その書類をもとに差押えができます。

これに対して、当事者間で「養育費を払うよ」と約束をしただけの状態だと、すぐに差押えをすることはできません。改めて、調停などのステップを踏む必要があります。

また、「調停調書」などができていても、金額が具体的に決まっていないと強制執行はできません

したがって、例えば、調停で「進学した時は学費を支払います」等の約束をしていても、具体的な金額が入っていないと、将来、不払いがあっても、直接強制執行をすることはできないのです。

理想的には、「高校進学時から月〇万円支払う」などの具体的な数字を入れてもらいたいところですが、どんな学校に入るのか分からない状態で、先のことを約束させるのはなかなか難しいのが現状です。

 

「債務名義」が「送達」されていること

強制執行関連の用語は難しいものが多く、分かりにくいかもしれませんが、要するに、調停証書や判決などが確実に相手に届いているという証明が必要だ、という意味です。

送達がなされていないと、強制執行ができません。

送達は、滞納が発生してからでも可能ですが、相手方が受け取らないこともありますので、調停が終了したとき、あるいは公正証書を作成したときには、調書もしくは公正証書の送達申請を忘れずに行いましょう。

 

この他に、債務名義の種類によって、「執行文」を得る必要があることもあります。

 

給与差押えの手続は、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てますが、郵送での手続も可能で、必ずしも裁判所に行く必要はありません。

相手方が遠隔地にいる場合でも交通費の負担を心配することなく差押えができますので、養育費の滞納でお困りの場合は給与差押えをご検討ください。

 

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養育費を支払ってもらえないとき

離婚について/養育費

養育費を合意したのに支払いをしてもらえない場合、どのように対処したらよいでしょうか。

 

まず、家庭裁判所の調停などで養育費を決めた場合には、裁判所を通じて「履行勧告」をしてもらうことができます。

これは、簡単に言えば、裁判所から相手方に対し「きちんと約束したとおりに支払をしなさい」と連絡をしてもらえる、というものです。

書面で履行勧告の申出をするのが普通ですが、口頭で伝えただけでも対応してもらえる場合もあります。

費用もかかりませんので、支払いが止まってしまったときには、まずは履行勧告をしてもらうことをお勧めします。

裁判所から連絡が行くことにより、支払が再開されるケースはたくさんあります。

しかし、履行勧告には強制力がありませんので、相手方が無視した場合に強制的に養育費を回収することはできません。

 

「履行勧告」から一歩進んだ制度として「履行命令」というものがありますが、履行命令にも強制力はありません。

したがって、履行勧告に応じない相手方に履行命令を出してもらっても効果がないことが多いです。

 

なお、以上の「履行勧告」「履行命令」は家庭裁判所の調停等を利用した場合にのみ使える制度で、当事者間の合意で養育費を定めた場合(公正証書を作成した場合を含む)には利用できません。

 

「履行勧告」または「履行命令」に応じない相手方に対しては、強制執行を申し立てるしかありません。

 

強制執行の中でもっとも一般的な方法は給与の差押えです

通常、差押えを行う場合には、すでに期限が来ている部分に限って差押えが可能となりますが、養育費等の場合には、一回の手続で、将来発生する養育費等を回収するために将来の給与を差し押さえるということができます。

これは、養育費を請求する側にとっては非常に使い勝手のよい手続ですが、支払を行なう側にとっては延々と差押えを継続されてしまうという面があります。

一度差押えをされてしまうと、差押えをストップする手続はないに等しく、唯一の方法は請求を行なう側に取下げをしてもらうことです。

 

しかし、養育費を滞納しておいて、いざ差押えをされたら「取下げてくれ」とお願いしても取下げてくれるはずはありません。

私が過去に担当した例では、「成人までの養育費を先払いするから取下げてほしい」との申し出があったにもかかわらず、これを拒否して差押えを継続された方もいらっしゃいました。

そうなると、勤務先での評価が下がったり、退職を余儀なくされたりするケースも出てきますので、くれぐれも養育費は滞納しないようにすべきでしょう。

もし、どうしても支払いができない事情がある場合には、改めて調停を申し立てて養育費の減額を求めるなど、それなりの手続を取る必要があります。

なお、退職をしてしまえば、その時点で差押えはストップします。(ただし、差押えの効力は退職金にも及びます。)

 

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養育費算定表の使い方

離婚について/養育費

現在、養育費や婚姻費用を決める場合には、裁判所が公表している養育費・婚姻費用の算定表を参考にすることが通例となっています。

数年前までは、法律相談の際に算定表の存在を紹介すると、ほとんどの方が「知らなかった」とおっしゃっていましたが、最近では、算定表の金額をチェックした上で相談に来られる方も多く、一般の方にも認知度が上がってきたと感じます。

今日は、算定表をどう見たらいいのか、についてご説明したいと思います。

算定表は下記をご覧ください。(裁判所の公式HPです)

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

 

算定表は、表1から表19まであり、

① 養育費か、婚姻費用か
② 子どもは何人いるか
③ 子どもの年齢は0~14歳か、それとも15歳~19歳か

によって場合分けされていますので、該当する表を探して見てください。

ここでは、表1 養育費・子1人表(子0~14歳)を例にとります。

(1) 両親の収入額を確認する

縦軸には「義務者の年収/万円」と書かれていますが、義務者というのは養育費の支払義務者のことです。
横軸は「権利者の年収/万円」と書かれていますが、権利者というのは養育費を受け取る人のことです。
つまり、子の母から父に対して養育費を請求する場合であれば、縦軸が父の年収、横軸が母の年収になります。

縦軸も横軸も、「給与」と「自営」に分かれていますが、給与所得者であれば「給与」、自営業者であれば「自営」の欄の数字を見ます。

ここでいう年収は、税金や社会保険料などを含めた、収入総額を指します。
つまり、いわゆる「手取り」ではなく、「額面」になります。

給与所得者の場合、源泉徴収票でいうと「支払金額」の欄に書いてある額で、何も引かれていない状態の額で見て下さい。

自営業者の場合には、確定申告書の「課税される所得金額」に書かれている額が「年収」になります。
ただし、「課税される所得金額」は、実際の収入とは乖離があります。
例えば、青色申告控除を受けている場合、実際には支払いをしていない専従者給与を計上している場合などです。
これらの場合には、実際には支出していない金額が「課税される所得金額」から差し引かれていますので、養育費等の計算に当たっては、「課税される所得金額」に「青色申告控除」「専従者給与」を加算した額を年収として考えます。

(2) 算定表上で、両親の収入額がクロスする場所を確認する

子の父と母の収入額が分かったら、算定表で、どの場所でクロスするかを見ます。

算定表では、25万円刻み(給与収入の場合)で数字が書かれています。
中間的な数字の場合はどこを見たらいいのか迷うと思いますが、近い数字の方を見るものとされています。
例えば、130万円の給与収入がある場合、125万円と150万円では125万円のほうが近いので、125万円の欄を見ます。

算定表は、2万円ずつの幅を持たせたものとなっています。
例えば2~4万円の枠内にクロスするポイントがある場合、個別的な事情を考慮して、2万円から4万円の間で決めるものとされています。

クロスするポイントが4万円に近い場合は4万円、2万円に近い場合は2万円、中間にある場合は3万円が標準額となります。
ただし、個別的に考慮すべき事情がある場合はこの限りではありません。

(3) 算定表の金額は、公立学校へ通うことを前提にしている

算定表は、公立中学校・公立高等学校に関する学校教育費を指数として考慮しています。
つまり、公立学校にかかる費用は織り込み済みなので、子どもが公立学校に通っている場合は、学費を加算するよう求めることはできません。

私立学校に通っている場合にその学費を加算できるかどうかについては、支払義務者の了解があったかどうか、支払義務者の収入・資産状況等によって判断されます。

 

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成人しても養育費を受け取れる場合とは?

法律基礎知識/養育費

通常、養育費を受け取れるのは成人するまで。
調停や審判、判決でも、養育費の終期を「20歳の誕生日を迎える月まで」と定めることが圧倒的に多いです。

ただし、これにも例外があり、
20歳よりも短くなる場合、20歳を超えても養育費を受け取れる場合があります。

20歳より短くなるのは、例えば、子どもが高校を卒業してすぐに働き始めた場合。
そもそも、養育費というのは、自分で生活する力がない子どものためのものですので、
社会人として収入を得るようになれば、養育費を支払う必要性は消滅します。

では、20歳を超えて養育費を支払ってもらえるのはどのような場合でしょうか?

もっとも多いパターンは、学生の場合。
4年制の大学などに通っていて、20歳を超えても自力で生活する収入を得られないケースでは、22歳までの養育費が認められることがあります。
また、子どもに障害・病気があるなどの理由で、成人しても自立ができない場合にも、20歳以降の養育費支払義務が認められます。

もっとも、大学に行っていれば必ず22歳までになるというわけではなく、
養育費の支払者(父であることが多い)が大学進学を承諾しているかどうか、経済的余裕があり学費の負担が可能であるかどうか、親の学歴や職業、家庭環境など、いろいろな事情を考慮して決められます。

特に、養育費の支払者が大学進学を承諾しているかどうかが重要なファクターとされることが多く、
父親に相談なく勝手に大学に進学した場合には、養育費は20歳で打ち切られる可能性が高くなります。

学費に関しても同様の考え方が採られており、養育費支払者の承諾の有無がモノを言います。

子どもが小さいころに離婚して、父親と音信不通の期間が長く続いた場合などには、父親に相談せずに大学進学を決めることも多いように思います。
進学が決まってから、改めて大学にかかる費用が高いことを知り、父親にも負担をお願いしたいというお気持ちになる方もいらっしゃいます。

しかし、進学を決めてから話を持っていきますと、「進学を承諾していない」と主張され、支払いに応じてもらえないことになりかねません。
気持ちの面でも、「何の相談もなく、金銭の要求だけか」と思われてしまい、快く支払ってもらうことは困難になりますので、進路を決める段階から、父親と連絡を取り合い、相談しておくことが肝要だと思います。

子どもにとっても、父親と進路について話し合うことは有益であるはずです。
進路を決める段階で、思い切って父親と進路について意見を聞き、大学進学について承諾を得ておくことをお勧めいたします。

ただし、承諾がなくても、
親の経済状況に余裕があり、きょうだい全員が大学に進学しているなどの事情がある場合などには、明示的な承諾がなくても養育費の支払いが認められることもあります。

また、20歳以降の養育費については、成人しており、アルバイト収入を得ることも多いということで、19歳までの金額よりも減額されることが多いのでご注意ください。

 

当事務所では、女性弁護士が養育費に関するご相談をお受けしております。

どのようなことでも結構ですので、お気軽にご相談ください。

養育費算定表の計算根拠

養育費

現在、養育費については、養育費算定表を参考に決められるケースがほとんどとなっております。

算定表については、こちら↓の記事をご参照ください。

養育費はどうやって計算されるのですか? | 堺けやき法律事務所.

 

では、この算定表の数字は、どういう根拠で弾き出されているのでしょうか?

 

これは、父と母双方の「基礎収入」を算定し、それを「生活費指数」で按分した金額となっています。

 

基礎収入とは何か?

 

基礎収入とは、実際の収入に、一定の割合を掛けて出した数字です。

給与所得者の場合、総収入×0.34~0.42=基礎収入

自営業者の場合、 総収入×0.47~0.52=基礎収入  とされています。

 

この「0.34~0.42」あるいは「0.47~0.52」という割合についてですが、所得が高額になるにつれて割合が小さくなるとされていますが、明確な基準を示した資料は見当たりません。

過去に経験した事例ですと、給与所得者の場合、年収120万円程度で0.41、年収500万円程度で0.38と認定された例があります。

 

生活費指数とは何か?

 

生活費指数とは、成人を100とした場合の生活費の割合です。

成人100、0歳から14歳までの子が55、15歳から19歳までの子が90とされています。

これは、厚生労働省が定めている生活保護基準のうち「生活扶助基準」を利用して積算される最低生活費に教育費を加算して出した数字です。

 

養育費の計算方法

 

Step 1 まず、子どもの生活に必要な金額(子どもの生活費)を弾き出します。

 

子どもの生活費は、養育費の請求を受ける側(義務者)の基礎収入に、生活費指数を按分計算して出します。

「義務者」「権利者」という言葉を使うと分かりにくいと思いますので、以下では、義務者=父、権利者=母、つまり、母から父に養育費を請求するものとして記載します。

 

子どもの生活費

=「父の基礎収入×子の生活費指数」/「父の生活費指数+子の生活費指数」

 

例 父の基礎収入300万円、子が10歳の場合

300万円×55/(55+100)=106万4516円(子どもの生活費)

 

Step2 子どもの生活費が分かったら、次は父が負担すべき養育費の額を計算します。     

 

養育費の額は、子どもの生活費に、父母の基礎収入を按分計算して出します。

 

養育費の額=「子どもの生活費×父の基礎収入」/「父の基礎収入+母の基礎収入」

 

例 父の基礎収入300万円、母の基礎収入100万円、子が10歳の場合

106万4516円×300万円/(300万円+100万円)=798,387円

 

つまり、年間の養育費は798,387円、月当たり66,532円となります。
以上の計算を簡略化したものが、養育費・婚姻費用算定表です。

 

今回の法律基礎知識は参考になりましたでしょうか?

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