法律基礎知識

養育費不払いのときの給与差押え

約束した養育費を支払ってもらえない場合に取れる手段のひとつが給与の差押えです。

差押えを行なうためには、いくつか条件があります。

 

1 「債務名義」があること

差押えは、「債務名義」として使える書類がないとできません。

と言っても、「債務名義」という名前の書類があるわけではなく、それを元に差押ができる書類のことを総称して「債務名義」と呼んでいます。

養育費の場合ですと、「調停調書」「和解調書」「判決」「公正証書」等によって養育費を決めている場合には、その書類をもとに差押えができます。

これに対して、当事者間で「養育費を払うよ」と約束をしただけの状態だと、すぐに差押えをすることはできません。改めて、調停などのステップを踏む必要があります。

また、「調停調書」などができていても、金額が具体的に決まっていないと強制執行はできません

したがって、例えば、調停で「進学した時は学費を支払います」等の約束をしていても、具体的な金額が入っていないと、将来、不払いがあっても、直接強制執行をすることはできないのです。

理想的には、「高校進学時から月〇万円支払う」などの具体的な数字を入れてもらいたいところですが、どんな学校に入るのか分からない状態で、先のことを約束させるのはなかなか難しいのが現状です。

 

「債務名義」が「送達」されていること

強制執行関連の用語は難しいものが多く、分かりにくいかもしれませんが、要するに、調停証書や判決などが確実に相手に届いているという証明が必要だ、という意味です。

送達がなされていないと、強制執行ができません。

送達は、滞納が発生してからでも可能ですが、相手方が受け取らないこともありますので、調停が終了したとき、あるいは公正証書を作成したときには、調書もしくは公正証書の送達申請を忘れずに行いましょう。

 

この他に、債務名義の種類によって、「執行文」を得る必要があることもあります。

 

給与差押えの手続は、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てますが、郵送での手続も可能で、必ずしも裁判所に行く必要はありません。

相手方が遠隔地にいる場合でも交通費の負担を心配することなく差押えができますので、養育費の滞納でお困りの場合は給与差押えをご検討ください。

 

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2016/12/09

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