法律基礎知識

成年後見・保佐・補助申立てなどについて

成年後見監督人が付いた場合はどうなるの?

成年後見・保佐・補助申立てなどについて/法律基礎知識

自分で財産の管理を行なう能力を失った方の財産管理を行なったり、身上監護を行なうのが成年後見人ですが、一定の場合には成年後見監督人が選任されます。

成年後見監督人は、文字通り、成年後見人がきちんと職務を行っているかどうかを確認する役割を担っており、

監督人が付いた場合には、定期的に財産のチェックを受けていただきます。

 

具体的には、だいたい2~3か月に一度、面談を行って収支や財産状況の確認、ご本人の状態の確認などを行います。

また、臨時の支出をする場合には、必ず事前に相談をして下さい。

成年後見人は、定期的に財産状況を裁判所に報告する義務がありますが、財産目録を調製するに当たっては、「成年後見監督人の立ち会い」が必要となります。

具体的には、成年後見人が財産目録を作成し、成年後見監督人に通帳などの原本を見てもらってチェックを受けることが多いと思われます。

 

成年後見監督人には弁護士が選任されることが多いのですが、監督人は、後見人の職務に目を光らせるということだけではなく、困った時のアドバイザーとしての役割もあります。

成年後見人として行動する上で判断に迷うことや、法律的なアドバイスが欲しいときには遠慮なく相談して下さい。

 

当事務所では、成年後見制度に関する御相談をお受けしております。

お気軽にお問い合わせください。

 

 

堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子

成年後見監督人がつくのはどんな場合でしょうか?

成年後見・保佐・補助申立てなどについて/法律基礎知識

成年後見の申立てをした場合、申立人が希望していないのに「成年後見監督人」が選任されることがあります。

これに関連し、例えば、

「親が認知症になり、子どもが成年後見人になりたいとして申立てをした。

子どもが成年後見人になることは認められたが、それにプラスして監督人を付けると言われてしまった。

何か問題があったのかと不安なのですが、監督人とは何ですか?」

というご相談が時々あります。

 

成年後見監督人は、裁判所の判断で付けられるもので、後見人の財産管理にサポートが必要であると考えられる場合に選任されます。

よく見られるのは、預貯金の金額や収入の額が多い場合など、財産管理の規模が大きい場合です。

最近では、きちんと財産管理ができる方が後見人に選ばれていても、財産の額が大きいと一律に監督人を付ける傾向があります。

監督人には弁護士が選ばれることが多く、私も何件か監督人を担当しています。

なお、監督人には一切利害関係のない人物を選ばなければならないので、申立人が「この人にしてほしい」と指定することはできません。

 

他には、

後見人の体調や年齢などから、ご自身で財産目録を作ったり必要な事務手続きを行なうのに不安がある場合、

収入の変動が大きく、定期的に財産の確認が必要な場合

本人と後見人との間に、金銭の貸し借りなどがある場合

本人の財産状況が不明確な場合

遺産分割などが予定されていて、後見人と本人との間に利益相反がある場合

などの場合にも、監督人が選任されることがあります。

 

監督人を付けるかどうかは裁判所の裁量で、上に挙げた事情には該当しなくても、本人の利益を守るために必要だと判断されれば付けられることもあります。

ただし、成年後見監督人の選任決定には理由は記載されません。理由を知りたい場合には、裁判所に問い合わせて口頭での説明を受けることになります。

決定書に理由が書かれないこともあってか、「なぜ監督人が付けられたのか納得ができない」と反発されることがしばしばあります。

その結果、後見人である親族と、監督人とのコミュニケーションがスムースにいかないこともあるので、監督人の選任に際し、裁判所から何らかの説明があればベターだと感じています。

 

当事務所では、成年後見に関するご相談をお受けしております。

お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

成年後見の申立て費用は誰が負担する?

成年後見・保佐・補助申立てなどについて

例えば、子どもが判断力の衰えた親のために成年後見を申し立てる場合、申立てにかかる費用は誰が負担するのでしょうか?

申立てに必ずかかる費用としては、印紙代、切手代、鑑定費用等の実費があります。

さらに、申立てを弁護士や司法書士に依頼した場合には、その費用も必要となります。

 

次の3つの選択肢から選んでください。

 

A 親が全部負担する。

B 子どもが全部負担する。

C 一部は親、一部は子どもが負担する。

 

これは、親のためにすることだから、当然に親の財産から出せる、正解はA、と考えた方が多いのではないでしょうか?

しかし、実は、正解はCなのです。

子どもが親のために成年後見の申立てをした場合、費用の全部を親の財産から出すことはできません。

特に、弁護士費用や司法書士費用は、子どもの自己負担となってしまいます。

これは、後見制度利用の妨げになりかねないとして問題視されているのですが、現行の制度では弁護士費用等を自己負担する必要がありますので、ご注意ください。

 

ご本人(上記の例では「親」)の財産から支出できる費用としては、

申立書に貼る収入印紙代

裁判所に予納する切手代

裁判所に予納する収入印紙代

鑑定費用(鑑定を行った場合のみ)

が挙げられます。

 

これらの費用は、申立人(上記の例では「子ども」)がいったん立替え、後から返還してもらう形となります。

また、これらの費用をご本人から返してもらうには、家庭裁判所の審判をもらう必要があります。

家庭裁判所で用意している成年後見申立ての書式では、「申立ての趣旨」の欄に

「本件手続費用は本人の負担とする」

という文字が印刷されていますので、こちらに忘れずにチェックを入れて下さい。

家庭裁判所の審判がない場合には、一切費用の立替分を返還してもらうことができませんので注意してください。

 

なお、ご本人が申立人となって成年後見等の申立てを行う場合には、ご本人の財産から弁護士費用等を含めた費用を支出することができます。

ただ、この場合には、ご本人が成年後見制度を理解し、申立てを行いたいという意思表示ができる状態であることが必要です。

 

当事務所では、弁護士が代理人となって成年後見申立ての業務を行うこともできますし、皆さまがご自身で申立てを行う際のお手伝いをさせていただくことも可能です。

お気軽にお問い合わせください。

 

 

成年後見人等の報酬はどれくらい?

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家庭裁判所から成年後見人に選任された者は、報酬の請求を行うことができます。 報酬は、裁判所が金額を決め、支払いはご本人の財産の中から行ないます。

ご家族が成年後見人になっている場合でも、成年後見人が自分で報酬を決めて勝手に支出することはできず、必ず裁判所の決定を得なければなりませんので、ご注意ください。

成年後見人に限らず、保佐人、補助人、さらにこれらの監督人についても同様です。

したがって、ご本人の財産がまったくない場合には報酬は支払われませんが、市町村によっては、財産のない方に対する報酬の助成を行っているところもあります。

 

報酬は裁判所が自動的に決めてくれるものではなく、こちらから申立てをしなければ決定されません。

申立てには所定の書式があります。

※リンクをクリックすると裁判所のHPが開きます。

 

大阪の場合、年に1回は必ず報告書を提出するというルールになっており、この報告書提出に合わせて報酬の申立てをすることが推奨されています。

報酬は「後払い」となり、通常、1年分の報酬をまとめて受け取る形となります。

下記の「めやす」では、月額〇万円という表現が取られていますが、毎月支払われるわけではありませんのでご注意ください。

 

金額については法律上明確な基準はありません。

裁判官が、後見人等の仕事の内容やご本人の財産の額などを総合して決定します。

ただし、現在では、目安となる金額が公表されています。

詳しくは裁判所のHPをご覧ください。

 

成年後見人の場合、基本的な報酬は2万円(月)です。

さらに、管理する財産の額が多額になった場合には、財産管理の業務もそれに比例して複雑・困難になるという考え方のもと、

財産が1000万円~5000万円の場合には基本報酬は3~4万円(月

財産が5000万円超の場合には基本報酬は5~6万円(月)

とされています。

 

また、成年後見人がご本人の身上監護を行うにあたり、特別に困難な事情があった場合には、基本報酬の1.5倍までの増額が認められています。

ご本人の財産管理上、特別の行為を行った場合にも、相当の加算がなされます。

例えば、本人のために訴訟や調停を行った場合、遺産分割や不動産の売却・管理を行った場合がこれに当たります。

(ただし、どの程度の金額が加算されるのかについての具体的な計算方法は公表されていません)

 

当事務所では、成年後見に関するご相談をお受けしております。

お気軽にご相談ください。

成年後見等の申立ての取下げについて

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成年後見(保佐、補助を含む)については、いったん申立てをすると簡単には取下げができません。

 

成年後見制度がスタートした当初は、他の家事事件と同様に成年後見等の申立てについても自由に取下げることが可能でした。

実際、私自身も、申立人が希望する人物が成年後見人に選任される見込みは薄いという理由で、取下げをしたことがありました。

しかし、今は、このような理由で取下げをすることは認められていません。

 

平成25年1月1日に、現行の「家事事件手続法」が施行されましたが、この法律には

後見開始等の申立てを取下げるには、裁判所の許可が必要」

という条文が入れられました(同法121条、133条、142条)。

 

そして、上に挙げたような、「自分が候補者に挙げた人物以外の人が後見人に選任される見通しになったから」という理由では、裁判所の許可は得られません。

この他に、「後見開始の申立てをしたのに、後見は認められず保佐開始の決定がなされる見通しになったから」とか、

「申立人が目論んでいたとおりに本人の財産を動かすことはできなさそうだから」

などという理由も認められません。

 

取下げが認められるのは、ご本人が亡くなられた場合など、やむを得ない事情があると考えられるケースのみです。

以上のように、一度後見の申立てをしますと、途中で取り止めることが大変難しい状況となります。

自分が後見人になるつもりで申立てをしても、それが認められず、まったくの第三者に財産管理を委ねることになる場合もあります。

しかも、成年後見人に選任された人物が不当であるとして異議申立てをすることも認められていません

※ 成年後見開始の審判そのものがおかしい!という場合は即時抗告という形で異議申立てが可能ですが、この人を成年後見人に選ばないでほしいという異議申立てはできません。

 

成年後見等の申立てをお考えの方は、その点もよくご理解の上、お手続きください。

 

当事務所では、成年後見等に関するご相談をお受けしております。

お気軽にご相談ください。

 

 

 

成年後見の申立てをお考えの方へ~誰が後見人になるのか

成年後見・保佐・補助申立てなどについて

成年後見制度は、判断力が不十分な高齢者や障害者の方に対し、ご本人らしい生活を送っていただき、かつ財産を守るための制度です。

親族とご本人との間で利害が対立する場合、後見人は、ご本人の気持ちや利益を尊重してご本人を援助しなければなりません。

成年後見人としては、自己の利益を優先させるのではなく、ご本人の意思・利益を十分に考えて行動できる人物が選ばれます。したがって、ご本人と重大な利害対立がある場合には成年後見人になることはできません。

 

成年後見人になるには特に資格は必要ありません。

法律上は、成年後見人を選任するには、本人の心身の状態や財産の状況、成年後見人となる者の職業、経歴、本人との利害見解の有無、本人の意見その他一切の事情を考慮するものとされています。

 

具体的には、ご家族(子ども、兄弟姉妹、配偶者など)が後見人になる例もたくさんあります。

しかし、ご家族が「自分が成年後見人になりたい」と希望しても、その通りになるとは限らず、裁判所の判断で第三者が成年後見人となることもあります。

特に、親族間でご本人の財産管理を巡って紛争がある場合等には、第三者(弁護士、司法書士など)が後見人として選任されることが多いです。

しかも、この場合は、裁判所が選任した利害関係のない中立的な弁護士が成年後見人になります。申立人が「この人に成年後見人になってほしい」と弁護士を連れてきても、認められないのが通例です。

 

また、親族間に紛争がない場合でも、財産が高額で管理が困難だったり、ご本人と成年後見人の利害が対立したりするときには、第三者が後見人になることがあります。

あるいは、親族が後見人になっても、後見人だけの判断で後見事務を行うのではなく、「成年後見監督人」を選任して監督人の指導監督がなされることがあります。

 

通常、成年後見人は1人ですが、特に必要がある場合には2人以上の後見人が就くこともあります。法律上は人数の制限は特に決められていません。

例えば、財産管理を弁護士が行い、身上監護(実際の生活の援助など)を家族が行うというケースがあります。

 

成年後見人になりますと、本人の財産管理を適切に行う権利と義務が発生します。

また、本人の生活全般に目配りし、適切に対応する義務があります。

具体的には、介護や生活維持、住居の確保、施設の入退所、医療、教育、リハビリその他、幅広い事項について成年後見人が責任を持つことになります。

大阪の場合、成年後見人は、少なくとも年1回、財産や本人の状況について家庭裁判所に対し報告書を提出しなければならないこととされています。

 

当事務所では、成年後見に関するご相談をお受けしております。

お気軽にご相談ください。