法律基礎知識

養育費を支払ってもらえないとき

養育費を合意したのに支払いをしてもらえない場合、どのように対処したらよいでしょうか。

 

まず、家庭裁判所の調停などで養育費を決めた場合には、裁判所を通じて「履行勧告」をしてもらうことができます。

これは、簡単に言えば、裁判所から相手方に対し「きちんと約束したとおりに支払をしなさい」と連絡をしてもらえる、というものです。

書面で履行勧告の申出をするのが普通ですが、口頭で伝えただけでも対応してもらえる場合もあります。

費用もかかりませんので、支払いが止まってしまったときには、まずは履行勧告をしてもらうことをお勧めします。

裁判所から連絡が行くことにより、支払が再開されるケースはたくさんあります。

しかし、履行勧告には強制力がありませんので、相手方が無視した場合に強制的に養育費を回収することはできません。

 

「履行勧告」から一歩進んだ制度として「履行命令」というものがありますが、履行命令にも強制力はありません。

したがって、履行勧告に応じない相手方に履行命令を出してもらっても効果がないことが多いです。

 

なお、以上の「履行勧告」「履行命令」は家庭裁判所の調停等を利用した場合にのみ使える制度で、当事者間の合意で養育費を定めた場合(公正証書を作成した場合を含む)には利用できません。

 

「履行勧告」または「履行命令」に応じない相手方に対しては、強制執行を申し立てるしかありません。

 

強制執行の中でもっとも一般的な方法は給与の差押えです

通常、差押えを行う場合には、すでに期限が来ている部分に限って差押えが可能となりますが、養育費等の場合には、一回の手続で、将来発生する養育費等を回収するために将来の給与を差し押さえるということができます。

これは、養育費を請求する側にとっては非常に使い勝手のよい手続ですが、支払を行なう側にとっては延々と差押えを継続されてしまうという面があります。

一度差押えをされてしまうと、差押えをストップする手続はないに等しく、唯一の方法は請求を行なう側に取下げをしてもらうことです。

 

しかし、養育費を滞納しておいて、いざ差押えをされたら「取下げてくれ」とお願いしても取下げてくれるはずはありません。

私が過去に担当した例では、「成人までの養育費を先払いするから取下げてほしい」との申し出があったにもかかわらず、これを拒否して差押えを継続された方もいらっしゃいました。

そうなると、勤務先での評価が下がったり、退職を余儀なくされたりするケースも出てきますので、くれぐれも養育費は滞納しないようにすべきでしょう。

もし、どうしても支払いができない事情がある場合には、改めて調停を申し立てて養育費の減額を求めるなど、それなりの手続を取る必要があります。

なお、退職をしてしまえば、その時点で差押えはストップします。(ただし、差押えの効力は退職金にも及びます。)

 

当事務所では、女性弁護士が養育費の支払いに関するご相談をお受けしております。

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2016/12/06

離婚について/養育費