法律基礎知識

親権争いにおける面会交流の重要性

最近、親権の判断に当たり、「面会交流に協力的かどうか」を重視すべきだとする考え方があります。

これは、「フレンドリー・ペアレント・ルール」とも言われ、欧米で主流となっている考え方です。親権者となるべき者には、元配偶者とうまくコミュニケーションを取り、子どもと非同居親との関係をサポートできる能力が必要である、とされています。

したがって、面会交流に消極的な態度を取る親には親権が認められにくくなります。

このフレンドリー・ペアレント・ルールは、日本ではまだ一般的ではありませんが、面会交流に重きを置く判決も出ています。

 

千葉家庭裁判所松戸支部は、昨年3月、離婚後の面会交流を最重要視して、次のような判断を下しました。

 

母親は、父親の承諾を得ずに子ども(判決の時点で小学校2年生の女の子)を連れて別居し、その後、約5年10か月間にわたり母親が養育しており、現在まで合計6回ほどしか面会交流に応じていない。今後も月1回程度の頻度とすることを希望している。

これに対し、父親は、子どもを取り戻そうといろいろな法的手段を講じたが認められず、もし、子どもとの生活が実現すれば整った環境で周到に監護する計画と意欲を持っており、母親と子どもの交流については年間100日に及ぶ面会交流を計画している。

これらの事情によれば、子どもが両親の愛情を受けて健全に成長するためには、父親が親権者となるのがふさわしい。

母親は子どもを慣れ親しんだ環境から引き離すのは長女のためにならないと主張しているが、新しい環境は実の父親が用意する整った環境で、現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない。

 

しかし、最近報道されたように、この判決は東京高等裁判所によって覆され、高裁では母親を親権者とすべきであるとの結論になりました。

高裁は、面会交流を優先して考えるのではなく、むしろ環境の継続性に重きを置いたものと考えられます。

この事件の父親側は上告を予定しているようですので、最高裁の判断が待たれるところですが、いずれにしても、面会交流に対する態度によっては、親権を失う可能性もあるということは肝に銘じておくべきだと思います。

上記の案件では、母親は過去に回数は少ないものの面会に応じた実績があり、今後は月1回程度の面会を行なうことを提案していますので、特別にマイナス評価となることはないと思われます。

しかし、これに対して、一切面会交流を拒否するような場合には、親権者の判断においてかなり不利な結果になっても仕方がないでしょう。(もちろん、暴力を振るわれる可能性があるなど、特に理由がある場合は別です。)

 

また、本件の原審判決は、母親が父親の承諾なく子どもを連れ去った点も、親権の評価に含めているのではないかと思われます。

一般的には、ある日突然母親が子どもを連れていなくなったという事案でも、それ自体が問題とされることはなく、むしろ、別居以降、母親が子どもを養育し続けているという事実が尊重される傾向があるので、実力を行使した方が有利になるのはおかしいという批判がなされています。

海外では、他方の親の承諾なく子どもを連れ去ることを違法とする国もあり、将来的には親権の判断において重要視されるようになるかもしれません。

 

当事務所では、離婚・親権に関するご相談に女性弁護士が応じております。

お気軽にお問い合わせください。

 

2017/01/30

法律基礎知識/親権