法律基礎知識

夫婦別姓と通称の使用

夫婦別姓が合憲かどうかという問題については、最高裁判所が合憲であるという答えを出している(平成27年12月16日大法廷判決)。その中で、最高裁判所は、通称の使用が社会的に広まっていることから、姓を変えることによる不利益は緩和されている、と述べている。

 

しかし、実感として、平成27年の時点では、旧姓使用はまだほんの一部分で認められているに過ぎず、むしろ、この際高裁判決を受けて旧姓使用が飛躍的に進んだと思う。旧姓使用が広く認められている国なんだから夫婦同姓でいいよね、と言ったことで、後からつじつま合わせのように旧姓使用が認められていった。そういう意味で、この判決の影響力は大きかった。

 

法曹界でいえば、弁護士会は、他の期間に先駆けて旧姓使用を積極的に認めており、私が弁護士登録をした平成8年には既に旧姓による登録が可能だったが、裁判所、検察庁では旧姓は使えなかった。それが、最高裁判決が出た後の平成28年9月からは、裁判官が旧姓で判決を出せるようになり、検察官を含む国家公務員も職務上旧姓を使えるようになった。

平成29年7月には、政府が銀行口座を旧姓で開設できるように要請しているというニュースを聞いた。もっとも、その後、実際に銀行が要請に応じたのかどうかまでは確認していない。

 

しかし、銀行口座にしても何にしても、旧姓を使用するに当たって問題になるのは本人確認である。戸籍姓を使用する場合は免許証を提示すれば済むところ、旧姓を使用しようと思えば戸籍謄本(または抄本)をわざわざ取り寄せて提示しなければならない。ちなみに、弁護士の場合、弁護士会が発行する証明書で旧姓の証明をすることができるが、弁護士会は官公庁ではないので通用しないこともある。

戸籍取り寄せの手間もさることながら、戸籍には、両親の氏名、どこで出生したか、いつ誰と結婚したかというような、免許証にはかかれていないきわめてセンシティブな情報が記載されている。これをイチイチ見せなければならないのは、プライバシー保護の面から望ましいことではないと考える。

 

私は、免許証やマイナンバーカードなどに旧姓が併記できるようにすればいいと思っている。そうすれば、もっとずっと簡単に旧姓の証明ができて、旧姓を使うことが当たり前になり、多くの女性が被っている不利益が軽減されていくのではないかと思う。

2018/06/08

コラム