法律基礎知識

フリマアプリの取引での商品紛失

最近、スマホのフリマアプリが爆発的に浸透して誰でも簡単に中古品の売買ができるようになり、ますますネットを介して商品売買を行なう人が増えました。

ネット上の取引は、相手と会って商品とお金を交換するのではなく、商品を郵便などで送りますので、「送ったのに届かない!」というリスクが付きまといます。

送料を節約するために普通郵便を利用するケースも多く、その場合には追跡が不可能です。

では、商品が行方不明になった場合、どのように解決したらよいのでしょうか。

 

「フリマアプリで商品を販売し、普通郵便で発送したのに、いつまで経っても届かないと言われた」

「郵便局に調査を依頼したが、分からないと言われた」

というケースを考えてみます。

 

民法上、これは「危険負担」の問題となります。

「危険負担」というのは、どちらの責任ともいえない理由によって目的物がなくなってしまったり、壊れてしまった場合に、そのリスクを誰が負担するのか、というお話です。

民法上は、「特定物」の場合には、リスクを負うのは「債権者(この場合は購入した人)」である、と規定されています(民法534条)。

「特定物」というのは読んで字のごとく、この商品!と特定されたモノのことです。

フリマアプリで取引するのは中古品がほとんどで、ここにあるこの商品!と特定されていますので、原則として「特定物」になると考えられます。

 

・・・ちょっと法律用語が入り混じって分かりにくいですね。

翻訳しますと、売買契約が成立した後に、不可抗力で商品がなくなってしまった場合には、損をするのは買った側ですよ、ということです。

火事が延焼して商品が燃えてしまった場合、運送途中で運送業者の過失により商品を紛失した場合などには、購入者は、商品は受け取れなくても代金を支払わなければなりません。

 

では、発送したのに届かない、というトラブルが発生した時には、発送はしたんだから私の責任じゃない、代金を払って!と言えばいいのでしょうか?

実際には、もうひとつ大きなハードルがあります。

「発送した」ことを証明できるかどうか?という問題です。

そもそも、発送すらしていないのであれば、単に、売った人が債務を履行していないだけですので、当然ながら代金を請求することはできません。

「発送した」のか、していないのか、それを証明できるのか、が大きな分かれ道となります。

 

きちんと記録が残る方法で発送していればこの問題はクリアできますし、それ以前に、郵便局や運送業者に損害を請求する形で解決することができるでしょう。

しかし、普通郵便など、記録が残らない方法で送付していると、発送したことを証明するのは至難の業。

結果として、代金の請求もできない、ということになることが多いと思われます。

購入者が受け取っているのに届かないと嘘を言うケースも想定されますが、送ったかどうかが分からない以上、売った人に不利に判断される可能性が高いです。

したがって、普通郵便などを利用する場合には、代金を請求できなくなるリスクがあると覚悟して取引をした方がよさそうです。

 

郵便の正確性に関しては、日本は世界一といっていいほどだと思いますが、稀に事故も発生しますし、上記のとおり噓を付く購入者がいることも否定できません。

フリマアプリは高校生など未成年者が利用することも多いようで、リスクについては思いが及ばず、トラブルになるケースが多いように見受けられます。

利用者は、紛失のリスクを意識し、できるだけ記録の残る方法で発送するようにすべきですが、それと共に、アプリの運営業者の側も、利用ガイドなどに「記録のない発送方法の場合は代金を請求できなくなることがある」と明記し、リスクを明確にする責務があるのではないか、と考えます。

 

 

 堺けやき法律事務所  弁護士 深堀 知子

 

2017/06/16

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