法律基礎知識

節税目的の養子縁組は有効か?

皆さんご承知のように、相続税の計算上、子どもが多ければ多いほど控除額が増え、相続税を安く抑えることができます。

そのため、節税テクニックとして養子縁組を行なう資産家がたくさんいます。

ただし、相続税の計算上、子どもとしてカウントされるのは、

被相続人に実子がいる場合には養子1人まで

実子がいない場合は養子2人まで  という制限があります。

 

また、平成26年12月31日までに被相続人が亡くなられた場合には、

基礎控除額=5000万円+1000万円×法定相続人の数

だったのですが、法改正により、平成27年1月1日以降は

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

になりましたので、養子を儲けることによる節税効果は以前よりは低くなっています。

 

最近、節税目的で行った養子が民法の規定により無効になるかどうかが争われた事案がありました。

このケースはある男性の相続の問題ですが、男性には、実子として長男、長女、二女の3人がいたようです。ところが、男性は、税理士から養子縁組をすると節税になると聞いて、孫(長男の子、当時未成年)を養子にしました。

実子であれ養子であれ、子どもの間では相続分は等分になりますから、養子が入ったことにより長女と次女の相続分が減ります。

本来は3分の1ずつだったものが、4分の1ずつになってしまうのです。

納得できない長女と次女が、養子縁組は無効だ!と主張して訴えたのが今回の事例ということになります。

 

民法上、養子縁組をする意思がないのに、形式的に養子縁組の形を取った場合は無効になる、つまり、偽装養子縁組はダメ、と規定されています。

純粋に節税目的だった場合はどうでしょうか?

実際に孫を引き取って親子として生活するわけじゃないんだから、養子縁組と言っても中身はない、偽装じゃないか、とも言えます。

しかし、最高裁は、たとえ相続税の節税目的だったとしても、それは「動機」に過ぎないから、養子縁組をする意思がなかったとは言えない、と判断しました。

きっかけが「節税になるなら養子にしようかな?」ということだったとしても、同時に、心から養親子関係を築く気持ちを持っていた、ってこともあるでしょ? という理屈でしょうか。

わざわざ養子縁組をした男性の真意としても、孫に相続させたいというお気持ちだったんだろうと推測されますので、この結論は被相続人の意思に沿うものだと思います。

 

もし、節税目的の養子は無効ということになれば、相続税法上の基礎控除も認められなくなり、従来の「養子縁組で節税」という慣行は通用しなくなるところでしたので、最高裁の判決は、従来の節税法を法的に認めたものと言えます。

 

判決文はこちらをご覧ください。

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2017/02/02

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