別居中の生活費は遡って請求できる?

今回は、何年も別居したままで離婚が成立しない場合、永遠に婚姻費用を請求し続けることができるのか?という問題について考えてみたいと思います。

別居が長いと婚姻費用が減ることがある

一般に、戸籍上の夫婦である限り、別居していたとしても、籍を抜くまでは婚姻費用の請求は可能とされています。

ただし、別居期間が長くなって、事実上婚姻関係が破綻している場合には、請求できる金額が少なくなるという考え方が主流で、家庭裁判所の審判でもそのような考え方に基づくものがあります。

しかし、具体的に、別居が何年になったらどの程度軽減されるのか、ということを示した基準はありません。

婚姻費用の金額は、当事者間で折り合いがつかなければ調停を申し立て、調停でも双方の協議がまとまらなければ裁判所が審判で金額を決定する、という流れになるのですが、最終的には裁判所の判断によって金額が決められることになります。

別居の原因も重視されている

婚姻関係が破綻していると認められる場合は、その原因がどちらにあったか?ということも重要視されていて、妻に全面的な責任がある場合には、妻の分の婚姻費用は請求できません。

その場合でも、子どもがいれば子どもの分の婚姻費用(つまり、養育費相当額)を受け取ることは可能です。 妻に全面的な責任がある場合とは、例えば、妻が不貞行為を行い、家を飛び出した場合などです。

ただし、破綻の直接的な原因のほかに、破綻に至る経緯や、関係を修復するために努力したかどうか、双方の経済能力など、さまざまな事情が考慮されますので、一見、妻に全面的な責任があるようにみえても、一定の婚姻費用分担が認められることもあります。

成人の子がいる場合

婚姻費用にカウントされるのは、自立した生活を送ることができない子どものみなので、成人に達した場合は、原則としてその子の婚姻費用を請求することはできません。

しかし、現実には、成人していても、病気や障害、あるいは就学などの理由で生活能力がないことがあります。 例えば、大学生の場合、親に経済力があり、大学進学を承諾している場合には、成人であってもその子の分を含めた婚姻費用を請求できると考えられています。

ただし、成人である以上、未成年者と同じ程度の金額になるわけではなく、アルバイト収入相当額を差し引くなどの修正が加えられます。

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調停で相手と顔を合わせたくない

よくお受けする質問の一つに、「調停では相手と顔を合わせなければなりませんか?」というご質問があります。

離婚の調停では、待合室も別々、調停委員が話を聞くのも別々です。

まず、申立人だけが調停委員に話を聞いてもらい、申立人が席を外した後に相手方が入室するという形で、申立人と相手方が交互に調停委員と面談しますので、基本的に相手方と対峙する場面はありません。

話し合いがまとまって、調停条項の最終的な確認をする時だけは同席することもありますが、これも、どうしてもイヤだという場合には別々にしてもらえることがほとんどです。

特に、DV事案などでは、当事者同士が顔を合わせることでトラブルになる可能性がありますので、裁判所に事情を伝えれば、呼び出し時間や終了の時間をずらしたり、待合室を別の階や離れた場所にしたり、帰る際に通常とは違う経路を誘導してくれたりなどの配慮をしてもらえます。

そうは言っても、同じ時間帯に同じ場所にいるわけなので、鉢合わせの可能性は否定できません。

私は、過去に1度だけ、当事者が裁判所の中で偶然出会ってしまったという経験があります。

これはDV事案ではなかったのですが、鉢合わせした際に要求を飲むように迫られてご本人の恐怖心が非常に強くなり、どうしても相手方と同じ日に裁判所に行くことができなくなってしまいました。そのため、最終的には別々の日に調停期日を開いていただきました。

しかし、これは非常に稀なことだと思います。

相手に会うと身の危険を感じるというほどならば、一人で行動しないほうがいいと思います。親族や友人に付き添ってもらうか、調停段階から弁護士を依頼した上で、どこかで弁護士と待ち合わせをして、一緒に裁判所に向かうようにすることをお勧めします。

離婚後に受け取れる手当はいくら?

児童扶養手当(母子手当) 離婚後に受け取れる「母子手当」。
正式な名称は「児童扶養手当」と言い、現在では父子家庭も支給の対象になっています。

法律相談でも、児童扶養手当はいくらもらえるのでしょうか?というご質問をよくお聞きします。

とても気になるポイントだと思いますが、所得の額や税法上の扶養親族の数によって算定され、人によってかなりの幅があります。

児童扶養手当は、18歳になる年の年度末まで(=高校卒業時まで)支給されますが、障がいのある子どもの場合は20歳まで延長されます。

また、一定以上の所得がある方は受給できません。

この「所得」は、給与や営業所得だけではなく、これらに加えて、別れた夫(妻)からの養育費の8割がカウントされます。

なお、従来、公的年金を受給されている方には児童扶養手当は支給されていませんでしたが、平成26年12月より、年金額が児童扶養手当の額よりも低い場合は、差額分の児童扶養手当を受け取れるようになっています。

具体的な金額ですが、子ども1人の場合、全額支給の場合は42,000円。

一部支給の場合は9,910円から41,990円の間で、収入に応じて10円きざみで決定されます。

子どもが2人の場合は5000円加算、3人以上の場合は1人につき3000円加算となっています(加算額は全部支給でも一部支給でも同額)。

なお、以上の額は平成27年4月以降の額です。

 

児童手当との関係

児童扶養手当と似た名称のものとして、「児童手当」があります。

児童手当は、15歳になる年の年度末まで(=中学校卒業時まで)支給されるもので、ひとり親家庭でなくても支給対象になるのに対し、児童扶養手当はひとり親家庭の援助という意味合いで支給されるもので、上記のとおり支給は高校卒業時までです。

児童手当と児童扶養手当は、それぞれの要件に該当していれば両方受け取れます。

別居中に児童手当を受け取るには

離婚前にお子さんを連れて別居しているお母さんから、「夫が児童手当を渡してくれない」という訴えを聞くことがあります。

児童手当は、子どもを監護し、生計を同一にする父または母に支給されます。

父と母とどちらに支給されるかというと、所得の高い方に支給されます。現在、一般的に男性のほうが高収入であることが多いので、夫名義の口座に入金されるというケースが多いのです。

別居後もそのままの状態にしておくと、実際に子どもを育てているのは妻なのに、夫が児童手当を取りこんでしまうということが起こります。

このようなケースでは、以前は、夫が手続に協力しない限りは振込先を変えられない、という対応をされていたのですが、現在では、夫婦が別居していて離婚協議中の場合、児童手当の受給者を妻に変更することができるようになりました。

 

その際、妻が子どもと同居していることを証明するため、住民票上、妻と子が同世帯になっていることが必要とされています。

また、離婚協議中であることを証明する書類が必要です。

例えば、調停中の場合は、離婚調停の期日呼出状、事件係属証明書(家庭裁判所に申請すれば発行してもらえます)などです。

調停を申し立てていない場合は、離婚申入れの内容証明郵便の写しや、弁護士が作成した証明書(離婚について弁護士を依頼しているとき)でも受け付けてもらえるようです。

DV事案で、裁判所から保護命令が出されている場合などに関しては、住民票を移さずに児童手当の受給者を妻にできるケースがあります。また、DV事案では住民票の閲覧等に制限をかけて夫に新住所を知られないようにすることも可能です。お住まいの自治体に必要書類や要件をお問い合わせの上、お手続きください。

不貞行為を理由とした慰謝料の「相場」

離婚の原因が相手方の不貞行為にある場合、相手方に慰謝料を請求することができます。

一般的に、不貞行為の慰謝料の「相場」としては、「数十万から300万円の間」の金額を挙げる例が多いようです。

もちろん、不貞行為の内容によって金額は異なりますので、一概に比べることはできないと思いますが、現在では、不貞行為の慰謝料としては200万円程度が平均的な金額ではないでしょうか。

私は今年で弁護士登録20年目となりますが、弁護士になったころよりも慰謝料の金額が下がってきているという印象を持っていて、同じようなことが書かれた文献を目にしたこともあります。 以前は、平均300万円というイメージでした。

明治時代には、不貞行為は姦通罪という犯罪でした。

それが戦後に廃止され、民事上の不法行為に該当するにとどまることとなりましたが、さらに時代が流れ、不法行為としての違法性の程度も徐々に薄くなってきているのではないかと感じています。

家族の形が多様化し、「結婚」の意味が変化してきていることの一つの表れなのかもしれません。

諸外国では、そもそも不貞行為は不法行為には該当せず、浮気をされても慰謝料は発生しないと考えられている国もあります。

 

慰謝料を決める要素

不貞行為の慰謝料は、例えば交通事故の場合のような基準は存在せず、「総合的に判断して」決められる形となっています。

そのため、裁判まで持ち込んだ時に認定される金額を予想することは難しいのですが、過去の事例から、次のような項目が慰謝料の算定要素になると言われています。

 

① 不貞行為の期間、態様、程度

期間が長ければ長いほど、頻度が多ければ多いほど、増額する方向に傾きます。

不貞の具体的な内容も問題となります。

 

② 結婚期間、それまでの結婚生活の状況

結婚期間が長い場合、長年築いてきた結婚生活が壊されたとして増額事由になることがあります。

また、不貞行為以前の結婚生活の状況も、慰謝料を決める大きな要素です。

従来の結婚生活がきわめて良好であったのに不貞行為によって破綻した場合、不貞行為が結婚生活に与えた影響は甚大で、慰謝料の金額は大きくなる傾向があります。

これに対して、元々夫婦関係がうまく行っていなかった場合、特にその原因が慰謝料を請求する側にあった場合には、慰謝料は減額されるでしょう。

なお、婚姻関係が「うまく行っていない」という状況よりさらに進んで、「破綻した」と評価される状態に達していた場合、破綻後の不貞行為は、そもそも不法行為に該当せず、慰謝料は発生しないと考えられています。

 

③ 不貞を主導したのが誰か

不貞を主導したのが配偶者・不貞の相手方のいずれであっても金額には影響しないとする考え方もありますが、積極的に不貞を働きかけたかどうかを算定要素とする判例もあります。

 

④ その他

その他、不貞行為から発覚後の事情に至るまで、いろいろな事情が考慮されます。

例えば、不貞が発覚した際に嘘をつく、別れると約束した後にも関係を継続していた等の事情がある場合、謝罪もせず開き直っている場合などは、より悪質だと評価され、増額の要因になります。

夫婦間にお子さんがいて、お子さんが親の不貞を知って苦しんでいる場合、それを慰謝料の増額要素と捉える例もあります。

また、不貞行為により妊娠・出産という結果が生じた場合は、それ自体の精神的苦痛の度合いが高いことはもちろん、戸籍にも記載が残り、配偶者が子どもの養育義務を負うことにより被る影響が大きいので、慰謝料の増額事由に当たります。

 

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家庭裁判所調査官の調査とはどんなもの?

家事審判規則では、「子が満15歳以上であるときは、家庭裁判所は、親権者指定変更の審判をする前に、その子の陳述を聞かなければならない。」と規定されています。

離婚調停や離婚訴訟で親権が争われている場合、子どもの意見を聞く方法として、家庭裁判所調査官による調査が行われることがあります。 あるいは、子どもの年齢にはかかわりなく、そもそも親権者として両親のどちらがふさわしいのか判断する目的で調査を行うこともあります。

調査官とは、法律だけではなく心理学・社会学・教育学等の知識を有する裁判所の職員です。 調査官による調査は、必ず行われるものではなく、特に必要性があると裁判所が判断した事案のみに限られますので、親権を決定する場合には必ず調査がある、というわけではありません。
過去の例では、15歳以上の子どもがいる離婚訴訟のケースで、親権に関しては夫婦間であまり対立がなかったので、子どもの気持ちを書面に書いて出すだけでよい、と指示されたこともありました。

 

調査官の調査はどういうことをするの?

調査官の調査の内容は、主に面談です。

通常、父親、母親、子どものそれぞれに、個別に面談します。

両親の他に、祖父母などが日常的に子どもの面倒を見ている場合には、祖父母などとの面談を行うこともあります。

その他に、保育園や幼稚園、学校などで担任の先生から事情を聴いたり、家庭訪問をしたりする例もあります。

 

面談の場所は、基本的には裁判所ですが、子どもとの面談は、家庭訪問という形で行われることが多いようです。

それは、特に小さい子どもの場合、家庭でリラックスした状態で面談するのが望ましいからだと言われています。また、養育環境の調査が調査内容に含まれる場合は、面接と養育環境の調査を兼ねて家庭訪問するということになるのでしょう。

ただし、ある程度の年齢に達している子どもで、子どもの意思確認がメインとなる場合などは、子どもが裁判所に出向いて面談することもあります。

 

もちろん、これらの面談は、事前に当事者の了解を得て行われるもので、突然、調査官が訪問してくるということはありません。

また、調査官が子どもと面談するときは、できる限り子どもの本心を引き出すために、父親または母親は立ち会わず、また、兄弟姉妹がいる場合にも一緒に面談するのではなく、通常、1対1で行われます。

弁護士が代理人で付いている場合、親の面談には同席させてもらうことができ、多少の補足説明などは可能ですが、子どもの面談には同席できません。

 

調査が終わった後はどうなるの?

調査官は、調査終了後に「報告書」を作成します。

調査官の報告は、裁判官の判断に重要な影響を及ぼしますので、調査官の調査が行われた場合には、必ず内容を確認しましょう。

「報告書」は、原則としては当事者が閲覧・謄写(コピー)をすることが可能です。

なお、閲覧は無料でできますが、謄写は有料です。

 

このように、調査官に伝えた内容は、「報告書」を通じて相手方に伝わる可能性があります。

どうしても相手方に知られては困る場合(例えば、DV事案で住所を秘匿しているが、ある事実から地域が推定されそうな場合など)には、その旨を調査官に伝えれば報告書には記載しないように配慮してもらえます。

ここは知られては困る、という情報があれば、面談の際にはっきりと伝えておきましょう。

 

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「監護権」は私、「親権」は相手と分けることはできる??

親権の中身

親権には、法律的に言いますと、大きく分けて「身上監護権」と「財産管理権」の二つが含まれると言われています。

 

まず、「身上監護権」。

これは、平たく言えば「子どもを育てる権利」のことです。

子どもに教育や医療などを受けさせ、子どもの住居を決めることができます。

また、子どもがアルバイトなどをする場合の許可を与えるのも親権者の役割です。

 

そして「財産管理権」とはその字のごとく、子どもの財産を管理する権利です。

子どもに財産なんてないから関係ない、という方もいるでしょうが、 例えば、万が一交通事故などに遭った場合、損害賠償金を請求することができるのは親権者に限られます。 また、子ども名義で銀行口座を開設することができるのも親権者のみです。

ちなみに、大阪府では高校の授業料無償化が実施されていますが、その条件の一つに、 「親権者全員が大阪府内に居住していること」 というものがあります。
例えば、東京在住の父が親権者になっているけれど、実際には大阪府内で母と居住している場合。 こんな場合には無償化の恩恵が受けられないことになってしまいます。

個人的には、こういうケースを何とか救済できないかと思いますが、親権の有無がこんなところにも響いてくるのです。

 

監護権の中身

監護権というのは、ザックリと言えば実際に子どもを養育する権利のことで、通常は親権者=監護権者となります。

しかし、民法上、親権者とは別に監護者を決めることができるという規定があり、親権者が父(母)、監護者が母(父)というように分けることがあります。

一般的には、監護者を決めた場合には、それは、上で説明した親権の内容のうちの、「身上監護権」を渡したことになる、と理解されています。

 

離婚の際、親権で揉めた挙句、妥協案として親権者と監護権者を分けるという形で決着しようとすることがあります。

しかし、上記の高校授業料の件に見られるように、実際の監護者が親権を持っていないといろいろな手続きをする上で不都合なことも多いので、やむを得ない理由がなければ親権者と監護権者を分けるべきではないと思います。

例えば、最近は高校の修学旅行が海外、という学校も珍しくありませんが、パスポートの申請は親権者に限られています。奨学金の申請も親権者の同意が必要です。 こんな場合はいちいち親権者に連絡を取って手続をしてもらう必要があります。

離婚後も元夫婦が密に連絡を取り合っていれば問題ないのですが、実際にはなかなか難しいことではないでしょうか。

 

また、戸籍謄本を取りますと「親権者」は明記されており一目瞭然ですが、監護権者に関しての記載はされません。

ただ単に子どもと一緒に暮らしているという場合、監護権者として定めたのかどうかがあいまいになり、のちに、親権者から「子どもを引き渡せ」と要求されるなどのトラブルが発生する可能性があります。

はっきりと監護権者として定めていれば、特に理由もないのに子どもの引き渡しを要求されるという心配はなくなります。

したがって、何らかの事情で監護権者を別に決める場合には、その旨の書面を残しておくことが必須です。

 

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親権は何を基準に決めるもの?

今回は、親権を決める際にどんな事情が考慮されるか、ということについてお話したいと思います。

最終的には、さまざまな事情を総合判断する、ということになるのですが、いくつかの原則があります。

 

子どもの意思

 

まず、子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を聴くというルールがあります。これは、家事審判規則の規定に基づくもので、「子が満15歳以上であるときは、家庭裁判所は、親権者指定変更の審判をする前に、その子の陳述を聞かなければならない。」とされています。

もちろん、子どもの希望だけですべてが決まるわけではなく、そのほかの事情も考慮されますが、子どもの意思にはかなりのウエイトが置かれます。

そして、15歳以下であっても、子どもが自分の意見を言える年齢に達していれば、裁判所が何らかの形で子どもの意見を聴くことがほとんどです。具体的には、小学校3~4年生以上になれば、子どもの意見が調停や審判、訴訟手続きに反映されているのではないかと思います。

 

現状の尊重

 

親権に対するひとつの考え方として、「現在の状態が安定していて養育環境に問題がないなら、それを尊重しよう」というものがあり、過去に、このような考え方に基づいて親権を判断した裁判例も多くあります。

この考え方は、例えば、母親が子どもを連れて別居しているような場合、母子間での結びつきがすでに形成されているのに、あえて母子を引き離して子どもを不安定にするのは望ましくないという配慮に基づくものです。

 

 

兄弟姉妹は一緒に

 

兄弟姉妹がいる場合、基本的には引き離さず、同じ環境の中で一緒に養育するのが望ましいと考えられています。もっとも、必ず兄弟姉妹は同じ親権者にしなければならないというわけではなく、何らかの事情がある場合(子どもの意見が食い違う場合や、現に分かれて育てられている場合など)は、親権者が別々になることもあります。

 

母性優先

 

特に小さい子どもの場合には母親の役割が大きいことを理由に、乳幼児では基本的に親権者を母とすべき、とする考え方があります。

もちろん、母親が母親としての役割を果たしておらず、父親(あるいは祖母など)が母親代わりの役割を果たしている場合もありますので、必ず母親が親権者になるとは言えません。
以上、4つの原則についてお話しましたが、この他に、親権者を決める際には、
※ 子育ての環境(住居や同居者など)

※ 仕事等との兼ね合いで時間的に養育が可能なのかどうか

※ 親権者が心身ともに健康かどうか

※ 養育をサポートしてくれる人がいるかどうか

※ 他方の親との面会を上手にサポートできるか
など、さまざまな事情が考慮されます。

 

よく、女性の相談者の方から、「私は夫より収入や資産が少ないので親権を取れないのでは?」というご質問がありますが、収入や資産などの経済的な条件は、実はそれほど重要なファクターではありません。  経済力が劣っていても、養育費の支払いを含めて、子どもの養育に必要な生活を維持できるのであれば、親権者になることは可能です。

 

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免責不許可事由がある場合の自己破産申立て

「免責」とは?

破産の決定があっても、負債の支払が免除されるわけではありません。
さらに、「免責」の決定を受けて初めて、法律上、負債を支払う義務が免除されます。

また、破産決定があると、職業上の資格制限が発生するのですが、免責決定があるとこれが元に戻ります。(「復権」と言います。)

このように、「免責」は破産を申し立てる方にとっては非常に重要なものであり、自己破産をする一番の目的は免責を得ることである、と言えます。

 

「免責」を受けられない場合

破産法では、「免責不許可事由」が定められております。
これに当てはまる場合、免責を受けることができない可能性があります。

例を挙げますと、
● 財産を隠した場合
● 浪費、ギャンブル等によって多額の財産が失われた場合
● 破産管財人に対する説明を拒否したり、職務を妨害した場合
などは、免責不許可事由に該当します。

 

「免責不許可事由」があっても、裁量により免責されることもある

ただし、免責不許可事由があると必ず免責不許可になる、というわけではありません。

破産に至る経緯など一切の事情を勘案して、裁判所が裁量により免責を認めるケースが相当数あります。

大阪地裁の場合、比較的重い免責不許可事由がある場合、破産管財人による生活状況の観察や指導を行い、その結果によって免責を認めるかどうかを判断するという取扱いがなされています。

免責不許可事由がきわめて重大な場合は別として、正直に財産状態を開示し、誠実に説明義務を果たし、破産管財人の指導に従って行動していれば、免責が認められる可能性は非常に高いです。

免責が認められなかったケースの中で目立つのは、財産を隠し、それについての説明を拒否する場合です。

自己破産をする場合、当たり前のことですが全ての財産を正直に申告すること、そして、破産管財人から質問があった場合にはこれに誠実に答えることが不可欠です。

破産者は、破産管財人に対する説明義務、重要な財産を開示する義務を負っており、これに違反することもまた免責不許可事由になります。

 

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離婚しても自宅に住み続けられますか?

離婚の際に生じる難しい問題のひとつが、結婚期間中に自宅を購入した場合の清算です。

 

誰が住宅を取得するのか決める

 

まず、離婚とともに別居するのが普通で、共同で自宅を使うことはできなくなりますので、

① 夫婦のどちらかが住宅を取得し、住み続ける

② 売却する

のどちらかを選択する必要があります。

 

①を選択した場合、通常は引き続き住む者が住宅を取得し、他方の当事者には金銭を渡す形で清算します。

具体的には、自宅の評価額から住宅ローンの残額を差し引き、通常はその2分の1に相当する現金を支払うことになります。住宅ローンの金額が評価額を越える場合(「オーバーローン」の場合)には、財産分与として渡すべき金銭はありません。

 

②の売却を選択した場合は、売却金を清算割合(基本的に2分の1ずつ)に応じて取得することになりますが、「オーバーローン」の場合は売却しても負債が残ります。

例えば、自宅を1000万円で売却できたが、その時点で残っている住宅ローンが1200万円だったとすれば、なお200万円のローンを支払わなければなりません。この場合、夫婦の双方が応分の負担をする必要があります。

 

支払能力がない場合の解決方法

 

いくら自宅に愛着があっても、特別の事情がないかぎり、ローンの支払能力がない場合には住宅を取得することはできません。

例えば、専業主婦で無収入の妻が自宅に住み続けたいと希望しても、住宅ローンを支払うあてがなければすぐに銀行に抵当権を実行されて住宅を失うことになってしまいます。かと言って、妻が住んでいる家のローンを、夫に負担させ続けるのも無理があります。

したがって、妻に支払能力がない場合は、夫に住宅を取得させるという結論にならざるを得ません。

 

ただ、ご本人の年齢・収入・健康状態や、養育するお子さんの状況によっては、すぐに転居できないこともあります。そこで、一定期間(例えば、子どもが学校を卒業するまでの間)建物を使用する権利を認めるという解決がされるケースもあります。

そういう形での解決をする場合には、期間や賃料の有無などの条件を巡ってトラブルが起きやすいので、きちんと書面を取り交わしておく必要があります。

建物の使用は、両当事者の意向や双方の経済状況等により、無償での使用が認められることもあれば、家賃を支払う形になることもあります。

 

また、実際には妻がローンを支払っているのに、銀行がローン及び不動産の名義変更を認めてくれない場合があります。

やむを得ず、夫名義のままで、妻がローンを支払い続けて自宅に住んでいるという方もいらっしゃいますが、そのままではローンを完済しても自分の財産にはならず、夫名義のままです。 少なくとも、夫との間で、ローン完済時には妻に名義変更する旨の約束をしておく必要がありますが、返済期間が何十年にも及ぶことが多く、夫と連絡が取れなくなって名義変更が困難になるケースもあります。 そのようなリスクがあっても、自宅に住み続ける必要があるのかどうかよく見極める必要があります。

 

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