相続人を調べるにはどうしたらいいか

例えば、預貯金を相続する場合を考えてみましょう。

 

金融機関は、相続人が一人も欠けることなく全員で手続するよう求めますので、

まず、誰と誰にハンコをもらえばいいのか、つまり、相続人が誰なのかを確定する必要が生じます。

家族の間では、相続人が誰なのか自明であっても、金融機関には分かりませんので、それを証明する作業が要るということです。

まれに、家族も知らなかった隠し子の存在が判明することもあります。

 

相続関係の証明のためには、必ず、戸籍謄本を取り寄せなければなりません

戸籍謄本は、被相続人(亡くなられた方)の生まれてから死亡までのつながった戸籍を取る必要があります。

 

最後の戸籍から、順番に遡っていけばよいのですが、

相続人が多数に及ぶ場合、特に、子がおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合などには、何十通と戸籍を取らなければならないことがあります。

日本では、過去に、戸籍の作り変え(改製)が行われており、改製前の戸籍もすべて取り寄せなければなりません。

戸籍が揃わないと銀行から預金を下すことはできませんが、相続人が多く、遠隔地に本籍地を置いている方がいる場合などには、取り寄せだけで1か月近くかかることもあります。

 

以上は、財産を相続する場合を念頭に置いていますが、

逆に、お金を貸していた相手方が死亡した場合も、同様に相続が発生しますので、相続人が誰になるのか探す必要があります。

いずれにしても、慣れていないと、戸籍の取り寄せに漏れが生じることもありますので、相続関係が複雑で不安な場合には、弁護士などに手続を依頼した方が良いと思います。

 

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相続人は誰になるか

遺言を残さずに死亡した場合、法律の定める順位によって相続が発生します。

逆に言いますと、下記の法定相続の順番どおりに相続させたくない場合には、遺言を書く必要があります。

 

法定相続の順位

 

(1) 配偶者

夫または妻は、常に相続人となります。

ただし、戸籍上の配偶者に限られ、いわゆる内縁関係の場合には相続権がありません。

 

(2) 

子は、配偶者がいる場合には配偶者とともに相続人となり、

配偶者がいない場合には子だけが相続人となります。

実子だけではなく養子も含まれますし、相続発生時(=死亡時)に胎児だった者も含まれます。

ただし、戸籍上の子に限られますので、例えば、再婚相手の子と養子縁組をせずに事実上養育していた場合、その子は相続人にはなりません。

 

(3) 直系尊属

直系尊属とは、親、祖父母、曾祖父母…を指します。

(2)の子がいない場合に、配偶者とともに相続人となり、配偶者がいない場合には直系尊属だけが相続人となります。

親には実親・養親を含み、親ががいない場合に祖父母が、祖父母がにいない場合に曾祖父母が相続します。

 

(4) 兄弟姉妹

(2)の子も、(3)の直系尊属もいない場合、配偶者とともに相続人となり、配偶者がいない場合には兄弟姉妹のみが相続人となります。

 

代襲相続

子と兄弟姉妹が相続開始時に既に死亡していた場合に、その子(孫または甥、姪)がいるときは、その子は、親の順位において相続することができます。

これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言っています。

さらに、子に関してだけは「再代襲」が認められ、子も孫も死亡していてひ孫だけが残っていた場合、ひ孫が子に代わって相続を行なうことができます。

これに対して、兄弟姉妹では再代襲はありませんので、兄弟姉妹だけでなく甥・姪まで亡くなっている場合に、甥・姪の子が相続をすることはありません。

 

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養育費不払いのときの給与差押え

約束した養育費を支払ってもらえない場合に取れる手段のひとつが給与の差押えです。

差押えを行なうためには、いくつか条件があります。

 

1 「債務名義」があること

差押えは、「債務名義」として使える書類がないとできません。

と言っても、「債務名義」という名前の書類があるわけではなく、それを元に差押ができる書類のことを総称して「債務名義」と呼んでいます。

養育費の場合ですと、「調停調書」「和解調書」「判決」「公正証書」等によって養育費を決めている場合には、その書類をもとに差押えができます。

これに対して、当事者間で「養育費を払うよ」と約束をしただけの状態だと、すぐに差押えをすることはできません。改めて、調停などのステップを踏む必要があります。

また、「調停調書」などができていても、金額が具体的に決まっていないと強制執行はできません

したがって、例えば、調停で「進学した時は学費を支払います」等の約束をしていても、具体的な金額が入っていないと、将来、不払いがあっても、直接強制執行をすることはできないのです。

理想的には、「高校進学時から月〇万円支払う」などの具体的な数字を入れてもらいたいところですが、どんな学校に入るのか分からない状態で、先のことを約束させるのはなかなか難しいのが現状です。

 

「債務名義」が「送達」されていること

強制執行関連の用語は難しいものが多く、分かりにくいかもしれませんが、要するに、調停証書や判決などが確実に相手に届いているという証明が必要だ、という意味です。

送達がなされていないと、強制執行ができません。

送達は、滞納が発生してからでも可能ですが、相手方が受け取らないこともありますので、調停が終了したとき、あるいは公正証書を作成したときには、調書もしくは公正証書の送達申請を忘れずに行いましょう。

 

この他に、債務名義の種類によって、「執行文」を得る必要があることもあります。

 

給与差押えの手続は、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てますが、郵送での手続も可能で、必ずしも裁判所に行く必要はありません。

相手方が遠隔地にいる場合でも交通費の負担を心配することなく差押えができますので、養育費の滞納でお困りの場合は給与差押えをご検討ください。

 

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養育費を支払ってもらえないとき

養育費を合意したのに支払いをしてもらえない場合、どのように対処したらよいでしょうか。

 

まず、家庭裁判所の調停などで養育費を決めた場合には、裁判所を通じて「履行勧告」をしてもらうことができます。

これは、簡単に言えば、裁判所から相手方に対し「きちんと約束したとおりに支払をしなさい」と連絡をしてもらえる、というものです。

書面で履行勧告の申出をするのが普通ですが、口頭で伝えただけでも対応してもらえる場合もあります。

費用もかかりませんので、支払いが止まってしまったときには、まずは履行勧告をしてもらうことをお勧めします。

裁判所から連絡が行くことにより、支払が再開されるケースはたくさんあります。

しかし、履行勧告には強制力がありませんので、相手方が無視した場合に強制的に養育費を回収することはできません。

 

「履行勧告」から一歩進んだ制度として「履行命令」というものがありますが、履行命令にも強制力はありません。

したがって、履行勧告に応じない相手方に履行命令を出してもらっても効果がないことが多いです。

 

なお、以上の「履行勧告」「履行命令」は家庭裁判所の調停等を利用した場合にのみ使える制度で、当事者間の合意で養育費を定めた場合(公正証書を作成した場合を含む)には利用できません。

 

「履行勧告」または「履行命令」に応じない相手方に対しては、強制執行を申し立てるしかありません。

 

強制執行の中でもっとも一般的な方法は給与の差押えです

通常、差押えを行う場合には、すでに期限が来ている部分に限って差押えが可能となりますが、養育費等の場合には、一回の手続で、将来発生する養育費等を回収するために将来の給与を差し押さえるということができます。

これは、養育費を請求する側にとっては非常に使い勝手のよい手続ですが、支払を行なう側にとっては延々と差押えを継続されてしまうという面があります。

一度差押えをされてしまうと、差押えをストップする手続はないに等しく、唯一の方法は請求を行なう側に取下げをしてもらうことです。

 

しかし、養育費を滞納しておいて、いざ差押えをされたら「取下げてくれ」とお願いしても取下げてくれるはずはありません。

私が過去に担当した例では、「成人までの養育費を先払いするから取下げてほしい」との申し出があったにもかかわらず、これを拒否して差押えを継続された方もいらっしゃいました。

そうなると、勤務先での評価が下がったり、退職を余儀なくされたりするケースも出てきますので、くれぐれも養育費は滞納しないようにすべきでしょう。

もし、どうしても支払いができない事情がある場合には、改めて調停を申し立てて養育費の減額を求めるなど、それなりの手続を取る必要があります。

なお、退職をしてしまえば、その時点で差押えはストップします。(ただし、差押えの効力は退職金にも及びます。)

 

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相手方が相続手続きに応じないとき

例えば、遺産である不動産を売るときには相続人全員の印鑑が必要ですし、預貯金を下すにしても同じです。

それでは、相続人のうちの一人がどうしても印鑑を押してくれない時にはどうしたらよいのでしょうか。

自分がもらう財産に不満があって印鑑を押さない場合もあれば、理由はよく分からないが話し合いに応じてくれないという場合もあります。

 

いずれにしても、直接話し合いができない場合には、調停を申し立てるしかありません。

調停は、相手方の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てることになっています。

相手方が不満を持っている場合は、ほぼ100%、相手方は調停に出てきます。

そうすれば、調停委員のサポートを得ながら話し合いを進めることができますので、時間はかかっても、解決に向かって物事は進んでいきます。

 

これに対して、なぜか分からないが相手方が反応しない、という場合には、調停にも出てこない場合があります。

このような場合は、裁判所の判断により事案にふさわしいと考えられるときには、相手方欠席のまま、「調停に代わる審判」を出してもらえることがあります。

「調停に代わる審判」に対し、相手方が特に異議を言わなければ、審判は「確定」し、審判に沿った処理(例えば不動産の相続登記を行なうなど)をすることができるようになります。

この方法は、相手方が裁判所から送られた書類を確実に受け取っている場合にのみ使えるものですので、相手方がほんとうに申立書に書かれた住所に住んでいるのか、調査を求められることもあります。

 

以上のように、相手方が印鑑を押してくれない場合でも、裁判所の手続きを取ることによって解決できるケースはたくさんありますので、相続手続きでお困りの場合は是非ご相談ください。