自己破産の同時廃止と管財の違いについて

 

破産には大きく分けて2種類がある

個人が破産する場合の手続きには、「同時廃止」と「管財」の2種類があります。
違いは、「破産管財人」を選任するかどうかです。
なお、法人の場合はすべて管財事件となります。


※管財事件とは?

破産とは、破産者の財産をお金に換えて債権者に配当を行う手続です。
裁判所は、「破産管財人」を選任し、破産管財人が財産を売却するなどしてお金に換え、配当を行います。
このような流れで進む事件を「管財事件」といいます。

管財事件になるのは、次のような場合です。

●破産者に一定以上の財産がある場合
・・・例えば、不動産を所有している場合は、一般的には管財事件になりますが、オーバーローン物件(不動産の価値よりも、住宅ローンの額のほうが著しく大きい場合)では、同時廃止が認められることがあります。

●破産者が事業を行っている場合
・・・事業の内容がかなり小規模、期間が短いなどの事情がある場合は、同時廃止が認められることがあります。

●破産者が会社代表者である場合

●破産者の財産を調査する必要がある場合
・・・保証債務や住宅ローンを除き、3000万円以上の負債がある場合には、財産調査の必要があるものとされます。

●免責不許可事由を調査する必要がある場合

●その他、破産管財人による調査が必要とされる場合

※同時廃止事件とは?

配当する原資となる財産がなく、その他破産管財人を付けるべき事情がない場合は、破産管財人を選任しても行うべき仕事はありませんので、破産管財人は選ばれず、破産手続きが開始すると同時に手続は終了となります。
これを「同時廃止」と呼んでいます。

管財事件と同時廃止事件をどうやって振り分けるのか?

管財と同時廃止のどちらを選ぶのか、ということは、申立ての時に弁護士が判断します。

通常、同時廃止のほうが費用が安く済み、手続に要する期間も短いので、同時廃止で申立てができる場合には同時廃止を選びます。
ただし、管財事件には、「自由財産を拡張できる」というメリットがあり、この点を重視して管財事件にすることもあります。
自由財産というのは、破産しても手元に置くことができる財産のことです。
同時廃止の場合は20万円以上の財産を保有したままにすることは認められないのですが、管財事件だと破産管財人の調査を受けた上で、99万円までの財産を保有することが可能になります。

また、申立てのときに、同時廃止を選んだとしても、裁判所の判断によって破産管財人による調査が必要だとして、管財事件に回されることもあります。

このような場合、次回にご説明する「予納金」(最低20万5000円)を納めなければなりません。

同時廃止から管財事件に移行した場合、予納金の納付にはある程度の猶予が認められますが、概ね半年以内に用意する必要があります。

 

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自己破産した時に保有を認められる財産の範囲 その2

破産法上、99万円までの現金等は「自由財産」とされており、当面の生活に必要な資金として手元に残すことができます。大阪地裁の場合は、普通預金も現金と同じ扱いです。

 

これに対して、現金や普通預金以外の財産の場合は取扱いが異なります。

現金・普通預金以外の財産としては、例えば、定期預金、積立金、自動車、保険の解約返戻金、不動産、退職金、株式などの有価証券などが挙げられます。

保険の解約返戻金については、実際に解約していなくても、「もし、今解約したら返戻金はいくらになるか」ということを保険会社に問い合わせ、返戻金が存在することが判明すれば、財産とみなされます。

 

大阪地裁では、現金・普通預金以外に20万円以上の価値がある財産がある場合は、次のようになります。

① その財産が20万円以上100万円以下の場合

a) 按分弁済
全額を債権者への弁済に充てれば、「同時廃止」手続を取ることができる。(「按分弁済」と呼んでいます)

「同時廃止」とは、債権者に分配する財産が存在しない場合に取られる手続で、破産開始決定と同時に破産手続を廃止(=終了するという意味)します。
b) 管財事件
「管財事件」として申し立てれば、「自由財産拡張」により、原則として99万円までの財産     を手元に残すことを認めてもらえる。

「管財事件」とは、破産管財人が選任されて財産の調査や換価を行う手続です。管財事件の場合、予納金として最低でも20万5000円(大阪地裁の場合)を納める必要があります。

 

② その財産が100万円を超える場合

上記①のa)で説明した按分弁済の方法を採ることはできず、必ず「管財事件」として申し立てる必要があります。

その場合も、①のb)と同じく、「自由財産拡張」が認められるのは原則として99万円までです。

 

例えば、25万円の定期預金を有していた場合を例に取ると、これは①に当たりますので、按分弁済を行うこともできるし、管財事件として申し立てた上で自由財産拡張を求めることも可能です。

しかし、管財事件にする場合には20万5000円の予納金が必要ですので、財産の額が比較的少額な場合は、按分弁済を選択した方がよいと思われます。

同時廃止手続の方が手続に要する期間が短く、また債権者集会も開かれないといった特徴があります。

 

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自己破産した時に保有を認められる財産の範囲 その1

自己破産すると、所有する財産をすべてお金に換えて債権者に配当することになりますが、
かと言って、手持ちのお金を根こそぎ持って行かれるわけではありません。

法律上、現金については、99万円までは「本来的自由財産」と決められています。
つまり、破産しても、99万円までの範囲であれば手元に置いておくことができるのです。
これは、破産者が生活を維持し、経済的に更生するために必要な資金と考えられています。

以前は、預貯金は現金ではないから「本来的自由財産」ではない、という考え方もありましたが、
現在、大阪地裁では、普通預貯金も現金に準じるものとしています。(定期預金等は別です。)

つまり、現金・普通預貯金を合わせて99万円以下であれば、問題なくそのまま保有することができます。

これに対して、現金・普通預貯金以外の財産については、ストレートに保有が認められるわけではありません。

例えば、定期預金や積立金がある場合
保険に加入していて、解約すると返戻金が戻ってくる場合
自動車を所有している場合
退職すると退職金の支給があると見込まれる場合

などが該当します。

現金・普通預貯金以外の財産がある場合でも、

① 各項目(保険なら保険、自動車なら自動車)ごとの評価額が20万円未満である
② すべてトータルした合計額が99万円以下である

の条件を満たした場合には、財産をそのまま保有することができます。

各項目ごとの評価額が20万円以上になった場合、あるいは財産の評価額のトータルが99万円以上になった場合は、

① 債権者に対して一定額を按分弁済する
または
② 破産管財人を付けてもらい、自由財産拡張の申立てをする
(ただし、99万円を超える自由財産拡張は、特別の事情がない限り認められません。)

のいずれかを選択することとなります。

破産管財人を付けると、原則として20万5000円の予納金が必要となりますので、この金額と、按分弁済に充てなければならない金額を比較検討して、負担が軽い方を選択するのが一般的です。

 

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勝手に離婚届を出された場合~離婚無効確認

今日は、離婚するつもりがないのに、勝手に離婚届を出されてしまった場合の対応についてお話したいと思います。

離婚する意思がないのに離婚届が提出された場合、その離婚は無効です。

しかし、日本の役所は、直接の意思確認をすることなく、離婚届に必要事項が書かれていれば受け付けるシステムになっていますので、無効であっても形式上の要件が整っていれば、戸籍に「離婚」と記載されます。

後で気が付き、窓口で「無効なんです!」と訴えても、役所ではどうすることもできません。

 

それでは、どこでどのような手続を取ればいいのでしょうか。

 

調停を申し立てる

まずは、「離婚無効確認」の調停を申立てましょう。

調停は、相手方の住所地のある家庭裁判所で申し立てます。

調停というのは、裁判所が間に入って、当事者同士が話し合いで問題を解決する制度です。

この場合は「勝手に離婚届を出されているので、離婚が無効であることを確認してほしい」という調停を申し立てることになります。

相手方が、「確かに勝手に出した」と認めれば問題は解決です。

ケースによっては、離婚無効確認の調停の中で、「こういう条件が整えば離婚してもよい」という話になり、離婚の条件を協議することもあります。

 

調停が不成立の場合は訴訟へ

調停の申立てに対し、相手方が「いや、確かにあなたは離婚に同意したではないか。」と言って譲らず、話が平行線である場合には、調停は不成立となります。

その場合には、調停手続きは終了となりますので、離婚無効を求める側は、改めて、家庭裁判所に対し、離婚無効確認の訴訟を提起することになります。

訴訟では、裁判官が証拠に基づき、離婚無効を認める・認めないの判断を下します。 離婚無効を認容する判決を得れば、相手方の同意・不同意にはかかわらず、強制的に戸籍を訂正することができるようになります。

しかし、離婚無効の調停から訴訟までの手続を行うのは時間的にも非常に長く、負担は決して軽くありません。

特に、調停はともかく、訴訟に慣れていない方が自分で訴訟手続を行うのは大変ですので、通常は弁護士に依頼することになり、費用的な負担も出てきます。

このような事態を避けるために、離婚届の不受理申出の制度がありますので、離婚届を勝手に出される危険がある場合には活用してください。

不受理届についてはこちらの記事↓もご覧ください。

勝手に離婚届を提出されないようにするには | 堺けやき法律事務所.

 

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相手が認知に応じない場合、どうするか?

 

まずは調停

 

通常は、認知届にサインをしてもらい、役所に提出すれば認知が成立するのですが、相手方がなかなか認知に応じてくれない場合、まずは調停の申立てを行い、話し合いでの解決を試みます。

認知に関しては、必ず調停から手続をしなければならないと決められており、調停を飛ばして訴訟を提起することはできません。

 

調停の中でDNA鑑定を行うこともありますが、

相手方が自分の子であることを認め、客観的な状況からも相手方の子であると認められる場合はDNA鑑定を行わず、調停が成立します。

 

調停が不成立の場合は訴訟

 

調停でも相手方が親子関係を認めず、調停が打ち切りになってしまった場合や相手方が調停に出席しない場合には訴訟を提起します。

相手方が訴訟に出席しなくても、親子関係が認められると裁判所が判断すれば、認知を認める裁判が下ります。

 

時々、男性側で、親子関係を否定し、DNA鑑定も拒否するという態度に出る方がいらっしゃいますが、拒否するという態度そのものが親子関係を肯定する方向に働きます。

裁判所からは、理由もないのに鑑定を拒否するのは身に覚えがあるからだろう、という目で見られることを覚悟してください。実際、鑑定を拒否したケースで認知が認められている例はたくさんあります。

 

相手方が完全に無視し、裁判に一切出席しなくても認知の判決を得ることはできます。

その場合、妊娠・出産に至る経緯を詳細に主張立証し、裁判官に、確かに親子関係が存在するという心証を得てもらうことになります。妊娠・出産の前後に相手方と交わしたメール、SNS、手紙なども証拠になることがありますので、消去・処分せずに保存しておきましょう。

認知は親としての最低限の義務で、それを無視するとは無責任極まりない行為だと思いますが、無視されたとしても認知はできますので諦めないでください。

 

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財産分与の割合は2分の1と決まっているのか?

財産分与の対象となる財産とは?

離婚に際しての財産分けのことを「財産分与」といいます。

財産分与の対象となるのは、結婚期間中に夫婦の協力によって得た財産。
たとえば、結婚期間中のお給料から貯めた預貯金、結婚後に購入した不動産などがこれに当たります。

これに対して、夫婦のどちらかが、結婚前から持っていた財産や、相続した財産などは、
夫婦が協力して得た財産ではありませんので、財産分与の対象にはなりません。
たとえば、妻が結婚前に働いて積み立てた貯金は、財産分与の対象ではなく、離婚しても、夫に分与する必要はないのです。
これを「固有財産」と呼んでいます。

ただし、預貯金や現金の場合、結婚後の財産と混じってしまい、固有財産かどうかの見分けがつかなくなることがあります。
結婚前の預貯金がそのままの通帳に残っていればいいのですが、一旦引き出してしまうと固有財産と認められにくくなります。

分与割合は2分の1?

民法の改正案では、財産分与の割合を2分の1ずつとするという「2分の1ルール」が取り入れられていますが、現在、まだ法律の改正には至っておらず、法律上は分与の割合に関する定めはありません。
しかし、実際上は、やはり夫と妻が2分の1ずつ取得するケースが圧倒的に多いように思います。

なお、夫側から、「専業主婦の妻を養っていたのに、さらに財産も半分取られるのですか?」と聞かれることがあるのですが、会社員の夫、専業主婦の妻のカップルで、妻が通常の家事労働を行っていれば、分与割合は2分の1と考えるのが普通です。

分与の割合に関しては、大きく分けて、次の3つの考え方があります。

● 何があっても2分の1ずつ、とする考え方
● 実際に財産形成にどの程度の貢献をしたのかを見て割合を決める考え方
● 基本的には2分の1ずつにするが、実際の貢献度が2分の1ずつではないことが証明された場合には、実際の貢献度に基づいた割合にするという考え方

一般的なのは一番最後の考え方です。

たとえば、夫婦のどちらかが、特に専門的な能力を有していたために高収入を得ていた場合、あるいは、専業主婦であった妻が家事労働を全く行っていなかった場合などに関しては、分与割合が2分の1にならない可能性があります。

注意しなければならないのは、現在の調停や審判では、「基本的に2分の1ずつ」という考え方が根強いので、積極的に、「寄与の程度が違いますよ!」ということを主張し、裏付けとなる証拠を提示していかないと、2分の1を前提として話が進むということです。

ご自身の寄与割合が明らかに2分の1を越えていると思われる方は、この点を意識する必要があります。
この部分が争点となる場合には、弁護士に相談または委任することを強くお勧めいたします。

財産分与の対象になる財産、ならない財産

夫婦が所有している財産の中には、離婚の際に財産分与の対象になるものとならないものがあります。

 

財産分与の対象となるもの

夫婦が協力して築き上げた財産のすべてが財産分与の対象となります。

例えば、住宅、預貯金、株式、保険、ゴルフクラブ等の会員権などです。

日常生活で使用する家具や電化製品などは、中古品になると経済的価値はほとんどありませんので、実際上、財産分与として取り上げられることはほとんどありません。

退職金や退職年金については、既に支給済みの場合は財産分与の対象になります。

まだ退職していなくても、近い将来(2~3年程度)に退職が予定されており、ほぼ確実に退職金が得られるという場合には財産分与の対象となることがあります。

これに対し、退職時期が未定でかなり先になりそうな場合には、退職金が支給されるかどうか自体が不確定ですので、財産分与で考慮されることはありません。

 

 

財産分与の対象にならないもの

結婚前からそれぞれが所有していた財産は財産分与の対象ではありません。財産分与の対象にならない財産を「特有財産」と呼びます。

結婚前に貯めていた預貯金はもちろん特有財産になりますし、嫁入り道具として持参したものや結婚指輪も妻の特有財産と考えられています。

また、結婚期間中に取得したものであっても、親から相続した財産は、夫婦が協力して得たものではありませんので財産分与とは無関係です。

結婚期間中に、夫婦のどちらかが単独で使用することを前提に購入した装飾品や身の回り品は、通常、特有財産とされます。

 

相手名義の預貯金等が分からない場合

結婚期間中、夫または妻に金銭管理を任せきりにしていて、どこにどれだけの預貯金があるのか全く分からないという方が時々いらっしゃいます。

しかし、財産分与を請求する場合には、「〇〇銀行のこの支店に預金があります」というように、はっきりと対象を特定する必要があります。

現在の日本の制度では、何も手がかりがない状態から相手方名義の預貯金を調査することは不可能です。裁判所に調停や審判を申立てたり、弁護士を依頼されたりしても、それは同じことで、いくら「預金が他にもあるはずだ」と主張しても、こちらでその証拠をつかむことができなければ財産分与を受けることはできません。

結婚生活がいよいよ破綻し、別居してしまってから相手の財産を調べることは非常に困難ですので、結婚生活が続いている間に、相手方の財産を把握しておくことをお勧めいたします。

 

当事務所では、女性弁護士が財産分与に関するご相談に応じております。

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財産分与とはどのようなもの?

 

慰謝料と財産分与の関係

 

離婚をする際に行われる財産のやりとりには大きく分けて「財産分与」と「慰謝料」があります。

財産分与とは、主に、結婚している間に夫婦が共同で形成した財産を分けるという趣旨の財産給付です。

慰謝料とは、離婚をもたらした責任のある夫または妻に対して請求できる損害賠償です。

このように、財産分与と慰謝料は法律的な性格は異なるのですが、民法上、財産分与については「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」(民法768条3項)という定めがあります。

つまり、財産分与を決める際に、「一切の事情」として慰謝料的な要素、さらには扶養的な要素が加味されることがあります。

 

清算目的での財産分与

もっとも一般的に行われているのが、夫婦共有財産を分けるという清算目的での財産分与です。

この場合、夫婦共有財産とは、名義を問わず、婚姻期間中に夫婦で得た財産を指します。実際に外で働いて収入を得ているのが夫のみであっても、それは妻の支えがあってこそですので、婚姻期間中の給与収入は夫婦共有財産となります。

不動産などの高額な財産は夫の名義になっていることが多いのですが、名義が夫であっても財産分与の対象になります。

 

慰謝料的な要素を加味した財産分与

上記のとおり、財産分与と慰謝料は別々の法的根拠に基づく請求権ですが、実際の判断では財産分与に慰謝料的な要素を含ませることが可能です。しかし、常に、慰謝料も含んだ形で判断されるわけではなく、純粋に財産のみの分与をすることもあります。

仮に、財産分与に慰謝料が含まれている場合には、別途、慰謝料を請求することはできなくなります。

この点に関連して注意すべきなのは、協議離婚や調停離婚で財産分与の合意をする際に、「慰謝料を含むかどうか」を明確にしておくべきであるということです。

この部分が曖昧だと、「こちらとしては慰謝料も全部含んだ金額で決着したつもりなのに、後日、慰謝料をさらに請求された」などということになりかねません。

 

扶養的な要素を加味した財産分与

財産分与の一態様として、離婚後の生活を保障する目的で、月々一定額を支払う形の財産分与が行われることがあります。

夫婦の一方が高齢、病気等の理由で離婚後の生活が困難な場合などに認められた例がありますが、事例としては非常に少ないです。

 

今回は離婚に際しての財産分与についてご説明しました。

当事務所では、毎週水曜日の午後に無料法律相談を実施しております。ご希望の方はお電話もしくはホームページからお申し込みください。

 

 

 

 

離婚した後に慰謝料を請求する場合の注意点

慰謝料は、離婚と同時に請求することが圧倒的に多いですが、離婚した後に請求することも可能です。

離婚した後に慰謝料の請求をしようと思い立った方は、以下の点にご注意ください。

 

慰謝料には時効があります

慰謝料請求権は、民法上、不法行為に基づく損害賠償請求権であり、3年の消滅時効にかかります。

したがって、離婚した日から3年を経過すると時効になってしまいます。

 

離婚に際して合意をした場合には内容に注意

公正証書、調停もしくは当事者間で取り交わした書面の中に、「慰謝料は請求しない」という文面が入っている場合には、当然ですが慰謝料の請求はできません。

また、「清算条項」と言って、例えば、

「両当事者は、本和解書に定めたものの他は、本件離婚に関し、何らの債権債務がないことを相互に確認する。」

というような条項が入ることがあります。

「何らの債権債務がない」=慰謝料請求権もない、という意味になりますので、このような合意をしてしまうと慰謝料の請求はできません。

離婚調停などで、今は請求をしないが、将来的に慰謝料の請求をしようと考えている場合は、清算条項を外してもらう必要があります。この点は誤解される方が多いので、十分に注意してください。

 

離婚と同時に話し合った方が支払いを受けやすい

離婚の話し合いを終えてから、改めて慰謝料の請求を行うことは法律上は可能ですが、実際には困難さが格段に上がります。

一度離婚が成立してしまうと、慰謝料を支払おうというモチベーションが下がるのが一般的で、任意に支払ってもらうことが難しくなります。金額も下がる傾向があります。

請求する側にしても、離婚の話し合いを終えた後に、さらに慰謝料の請求を別建てで行うとなるといつまでも紛争が続き、精神的にも辛くなると思います。

慰謝料を支払う側が離婚を強く望んでいる場合には、慰謝料を支払うから離婚に応じてほしいという心情になることが多く、比較的金額も高めになりますので、多少話し合いの時間がかかっても、離婚と同時進行で請求することをお勧めいたします。

 

当事務所では、女性弁護士が離婚に関連する慰謝料請求等のご相談に応じております。

ネットからのご予約もできますので、お気軽にお問合せ下さい。

離婚のときに持家をどうするか?

離婚の際に生じる難しい問題のひとつが、結婚期間中に自宅を購入した場合の清算です。

 

誰が住宅を取得するのか決める

 

まず、離婚とともに別居するのが普通で、共同で自宅を使うことはできなくなりますので、

① 夫婦のどちらかが住宅を取得し、住み続ける

② 売却する

のどちらかを選択する必要があります。

 

①を選択した場合、通常は引き続き住む者が住宅を取得し、他方の当事者には金銭を渡す形で清算します。

具体的には、自宅の評価額から住宅ローンの残額を差し引き、通常はその2分の1に相当する現金を支払うことになります。住宅ローンの金額が評価額を越える場合(「オーバーローン」の場合)には、財産分与として渡すべき金銭はありません。

 

②の売却を選択した場合は、売却金を清算割合(基本的に2分の1ずつ)に応じて取得することになりますが、「オーバーローン」の場合は売却しても負債が残ります。

例えば、自宅を1000万円で売却できたが、その時点で残っている住宅ローンが1200万円だったとすれば、なお200万円のローンを支払わなければなりません。この場合、夫婦の双方が応分の負担をする必要があります。

 

支払能力がない場合の解決方法

 

いくら自宅に愛着があっても、特別の事情がないかぎり、ローンの支払能力がない場合には住宅を取得することはできません。

例えば、専業主婦で無収入の妻が自宅に住み続けたいと希望しても、住宅ローンを支払うあてがなければすぐに銀行に抵当権を実行されて住宅を失うことになってしまいます。かと言って、妻が住んでいる家のローンを、夫に負担させ続けるのも無理があります。

したがって、妻に支払能力がない場合は、夫に住宅を取得させるという結論にならざるを得ません。

 

ただ、ご本人の年齢・収入・健康状態や、養育するお子さんの状況によっては、すぐに転居できないこともあります。そこで、一定期間(例えば、子どもが学校を卒業するまでの間)建物を使用する権利を認めるという解決がされるケースもあります。

 

建物の使用は、両当事者の意向や双方の経済状況等により、無償での使用が認められることもあれば、家賃を支払う形になることもあります。

 

また、実際には妻がローンを支払っているのに、銀行がローン及び不動産の名義変更を認めてくれない場合があります。

やむを得ず、夫名義のままで、妻がローンを支払い続けて自宅に住んでいるという方もいらっしゃいますが、そのままではローンを完済しても自分の財産にはならず、夫名義のままです。 少なくとも、夫との間で、ローン完済時には妻に名義変更する旨の約束をしておく必要がありますが、返済期間が何十年にも及ぶことが多く、夫と連絡が取れなくなって名義変更が困難になるケースもあります。 そのようなリスクがあっても、自宅に住み続ける必要があるのかどうかよく見極める必要があります。

 

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