養育費算定表の計算根拠

現在、養育費については、養育費算定表を参考に決められるケースがほとんどとなっております。

算定表については、こちら↓の記事をご参照ください。

養育費はどうやって計算されるのですか? | 堺けやき法律事務所.

 

では、この算定表の数字は、どういう根拠で弾き出されているのでしょうか?

 

これは、父と母双方の「基礎収入」を算定し、それを「生活費指数」で按分した金額となっています。

 

基礎収入とは何か?

 

基礎収入とは、実際の収入に、一定の割合を掛けて出した数字です。

給与所得者の場合、総収入×0.34~0.42=基礎収入

自営業者の場合、 総収入×0.47~0.52=基礎収入  とされています。

 

この「0.34~0.42」あるいは「0.47~0.52」という割合についてですが、所得が高額になるにつれて割合が小さくなるとされていますが、明確な基準を示した資料は見当たりません。

過去に経験した事例ですと、給与所得者の場合、年収120万円程度で0.41、年収500万円程度で0.38と認定された例があります。

 

生活費指数とは何か?

 

生活費指数とは、成人を100とした場合の生活費の割合です。

成人100、0歳から14歳までの子が55、15歳から19歳までの子が90とされています。

これは、厚生労働省が定めている生活保護基準のうち「生活扶助基準」を利用して積算される最低生活費に教育費を加算して出した数字です。

 

養育費の計算方法

 

Step 1 まず、子どもの生活に必要な金額(子どもの生活費)を弾き出します。

 

子どもの生活費は、養育費の請求を受ける側(義務者)の基礎収入に、生活費指数を按分計算して出します。

「義務者」「権利者」という言葉を使うと分かりにくいと思いますので、以下では、義務者=父、権利者=母、つまり、母から父に養育費を請求するものとして記載します。

 

子どもの生活費

=「父の基礎収入×子の生活費指数」/「父の生活費指数+子の生活費指数」

 

例 父の基礎収入300万円、子が10歳の場合

300万円×55/(55+100)=106万4516円(子どもの生活費)

 

Step2 子どもの生活費が分かったら、次は父が負担すべき養育費の額を計算します。     

 

養育費の額は、子どもの生活費に、父母の基礎収入を按分計算して出します。

 

養育費の額=「子どもの生活費×父の基礎収入」/「父の基礎収入+母の基礎収入」

 

例 父の基礎収入300万円、母の基礎収入100万円、子が10歳の場合

106万4516円×300万円/(300万円+100万円)=798,387円

 

つまり、年間の養育費は798,387円、月当たり66,532円となります。
以上の計算を簡略化したものが、養育費・婚姻費用算定表です。

 

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勝手に離婚届を提出されないようにするには

協議離婚は、夫婦の双方が署名した離婚届を役所に提出することにより成立します。

その際、夫婦が揃って役所に行く必要はありません。

通常、夫婦のどちらかが単独で提出することが多いと思われますし、さらに進んで代理人に提出してもらったり、郵送で提出することもできます。

そのため、ケースによって、本人が離婚するつもりがないのに、勝手に離婚届が提出された、という事態が発生します。

さすがに、離婚届の署名を偽造するケースはあまり聞いたことがありませんが、よくあるのは、

「数年前に離婚の話し合いをしたときに相手に離婚届を預けたものの、その後よりを戻して仲良く生活していた。ところが、最近、相手が突然離婚届を出してしまった。」

というようなご相談です。

このような場合、離婚届が提出された時点で、こちらには離婚する意思がなかったわけですから、離婚は無効であると主張することができます。

しかしながら、実際に戸籍を訂正するためには判決を得なければなりません。かなりの労力を要しますし、時間も費用もかかります。

 

 

そのため、本人の意思に基づかない離婚届の提出がなされる恐れがある場合には、

協議離婚届の不受理申出

ができることになっています。

相手が勝手に離婚届を出してしまうかもしれないという懸念がある場合には、不受理の申出をすることをお勧めいたします。

不受理申出をしますと、協議離婚の届出がされても、本人自身が窓口に出頭して届け出たことを確認することができない限り、届出は受理されません。

不受理の申出をしたいときは、本籍地のある市役所または町村役場の戸籍係に行って手続をして下さい。原則として本人が直接窓口に行く必要があります。

手続の方法や必要書類について、詳しくは、本籍地のある市町村にお問い合わせください。

不受理申出は、勝手に婚姻届が出される危険がある場合にも利用できます。また、養子縁組、離縁、認知の届け出についても不受理の申出ができます。

 

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養育費はどうやって計算されるのですか?

金額の目安

現在、「養育費・婚姻費用算定表」により目安の数字を弾き出し、その幅の範囲内で具体的な金額が決められるケースがほとんどです。

「養育費・婚姻費用算定表」は、裁判所のホームページで公開されています。

実際の表は、裁判所|養育費算定表.をご覧ください。

この算定表の根拠となっている計算方法については、改めてご説明します。

 

算定表の読み方

① 該当する表を探す。

算定表は、表1から表19までになっています。

各ページの右上に、「表1」「表2」…の記載があります。

それぞれ、お子さんの数と年齢で分けられていますので、当てはまる表を探しましょう。

例えば、お子さんが1人で14歳以下でしたら、

「表1 養育費・子1人用(子0~14歳)」を選んでください。

 

② 当てはまる表が見つかりましたら、年収額を確認してください。

 横軸「権利者の年収/万円」というのは、養育費を請求する方の収入です。

 縦軸「義務者の年収/万円」というのは、養育費を支払う方の収入です。

  妻が夫に対して請求する場合を例にすると、横軸が妻の収入、縦軸が夫の収入になります。

 給与収入を得ている方の場合は、「給与」のほうの数字を見ますが、これは、年間での収入。金額は手取りではなく、収入総額になります。

 つまり、源泉徴収票でいうと一番左側に記載されている「支払金額」=一番額の大きい数字で見て下さい。

 自営の方の場合は、「自営」のほうの数字を見ますが、これは確定申告書の「課税される所得金額」になります。

 ただし、税金の申告上、控除が認められるものであっても、実際には支出していないもの(青色申告控除、支払がされていない専従者給与、社会保険料控除以外の各控除項目等)に関しては、「課税される所得金額」に加算されます。

 

③ 権利者(妻)と義務者(夫)の収入がクロスする欄の金額が、養育費の目安となる金額です。

 例えば、権利者の収入が200万円、義務者の収入が400万円の場合、

「表1 養育費・子1人用(子0~14歳)」の養育費は4~6万円です。

クロスする位置が上の方であれば6万円、下の方であれば4万円というように判断されるのが普通です。

 基本的に、養育費はこの幅の範囲内で決められることになります。

 絶対にこの範囲を超えた金額にはならないというわけではないですが、一般的に想定される事情はすでに組み込まれた上での金額なので、この範囲を超えるのは非常に特殊な事情がある場合に限られます。

 

 

 

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離婚の話し合いが進まないとき

離婚の話の進め方

 

離婚を切り出したが、相手が応じなくて困っている。非常に多いご相談です。

 

当事者での話し合いがどうしても難しい場合、

① 弁護士などの第三者を間に入れて話し合いをする

② 調停を申し立てる

のいずれかの方法を採ることになります。

調停でも解決できない場合は、訴訟を提起します。

 

つまり、離婚に関しては、

① 第1段階  当事者間での話し合い

② 第2段階  第三者(弁護士)を入れての話し合い(示談交渉)

③ 第3段階  調停

④ 第4段階  訴訟(裁判)

という4つの段階があります。

このうち、①と②は必ず行わなければならないものではなく、事前の話し合いが難しい場合は、直接③の調停を申し立てることも可能です。これに対して、調停を飛ばして訴訟を行うことは原則不可で、まずは調停を申し立てなければなりません。

 

示談交渉のメリット・デメリット

 

では、「第1段階」がうまくいかない場合、弁護士に示談交渉を依頼した方がいいのか(第2段階)、それは飛ばして調停を申し立てた方がいいのか(第3段階)。

 

調停の場合、申立ての約1か月後に第1回目の期日が入り、その後も概ね月に1回のペースで開かれることが多いので、解決までにそれなりの時間がかかります。また、期日のたびに裁判所まで出向く必要があります。

なお、訴訟事件などで弁護士を代理人として依頼した場合は代理人のみの出席でも問題ないのですが、離婚調停の場合には原則としてご本人も代理人とともに出席していただきます。

 

これに対し、弁護士に示談交渉を依頼する場合は、弁護士が面談、書面、電話など適宜の方法で、相手方と直接連絡を取って話し合いをしますので、よりテンポよく話し合いを進めることができます。相手方次第ですが、交渉がうまく進めば、かなりスピーディに解決できます。 もちろん、裁判所に行く必要もありません。

 

示談交渉を弁護士に依頼した場合のデメリットとしては、弁護士費用がかかること。 また、弁護士が間に入っても合意に至らない場合は、次の段階として調停を申し立てることになりますので、逆に解決までに時間がかかることもあります。

通常、弁護士費用(着手金)は、「示談交渉事件=第2段階」と「調停=第3段階」と分けて設定されていることが多いので、交渉が決裂して調停に移行すると、それだけ費用を要しますし、時間もかかります。

また、示談交渉の結果として合意が成立した場合、強制執行をする効力を持たせるには、別途「公正証書」を作成する必要があります(費用がかかります)。

 

示談交渉をお勧めできるのは、

① 示談交渉で解決できる見込みがある

② 時間的・地理的な事情その他の理由により、裁判所に通うのが難しい

③ 多少費用がかかってもやむを得ない

というケースです。

 

相手方にも弁護士が代理人として付いている(あるいは付ける可能性が大きい)場合は、弁護士同士の話し合いでスピーディに解決できる確率が高いです。

離婚そのものに納得していない場合、親権を争っている場合、感情的な対立が激しい場合などは、弁護士が間に入って話し合うよりも、直接調停を申し立てた方がよい場合が多いと思われます。

 

 

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